政治勢力「オール沖縄」とは 経済界離脱、革新色強まる? 【図解】
保守系経済人の離脱
とはいえ、異なる勢力が結集しているゆえ、基地問題に関する反対の立場で一つになれても、それ以外で「オール沖縄」が統一的な政策を掲げているわけではない。特定政党の主義主張が頭をもたげることもあり、それが亀裂を生じさせ、2018年ごろから表面化する。きっかけは、けん引役となってきた地元の著名な経済人が、翁長知事の支持団体「オール沖縄会議」から相次いで「離脱」すると表明したことだ。 その1人が、県内でスーパーや建設業などを展開する「金秀グループ」の呉屋守将(もりまさ)会長。翁長氏を全面的に支援する考えを打ち出し、県内の選挙にも積極的に関与してきた。だが、18年2月の名護市長選で、「オール沖縄」が支援した現職が政府与党の強力なバックアップを受けた新人に敗れたことを理由に、呉屋会長は「オール沖縄会議」の共同代表を辞任すると表明(18年3月)。辞任に際し、オール沖縄は「政党色が強くなりすぎた」と語った。
「オール沖縄」の退潮を印象づけたもう一つの出来事が、県内ホテル大手「かりゆしグループ」のオール沖縄会議からの脱会(18年4月)だった。オーナーの平良朝敬会長もまた、翁長氏を支援してきた代表的な沖縄の経済人。「オール沖縄」を保守側から支えるシンボルだった呉屋、平良の両氏が距離を置いたことで、「オール沖縄」の革新色は強まったことは否めない。対立してきた自民党内からは「オール沖縄にもはや実態はなく、共産党や社民党などでつくる革新共闘に過ぎない」(自民県議)とやゆする見方がある。
「オール沖縄」の現在地は?
急逝した翁長氏の後を継いだ玉城デニー氏は18年9月の県知事選で、普天間飛行場がある宜野湾市長で、辺野古移設を容認した 佐喜眞淳氏に大勝。また、「オール沖縄」の立場を掲げる国政野党の議員が多く当選していることからも分かるように、選挙における「オール沖縄」の影響力は健在だ。県議会でもかろうじてだが、玉城知事を支える県政与党議員が多数を占める構成となっている。 沖縄県内の選挙は「自民・公明VSオール沖縄」の対決構図が定着し、米軍基地問題を背景に「政府VS沖縄県政」の代理戦争の様相を呈している。この流れは当面続く見通しだ。 玉城知事を支える「オール沖縄」関係者は言う。 「オール沖縄がオール沖縄であるために、知事は常に選挙に勝ち続けなければいけない宿命を背負わされている」 支持層の裾野を広く持ち、選挙で勝ち続けることができなければ、上記の自民県議が指摘するように「オール沖縄」との冠を付けながらも、「実態としては単なる革新勢力」とみなされても仕方がないかもしれない。 沖縄県内11市の首長選挙でも「オール沖縄」の影響力は地元メディアで盛んに取り上げられる。21年2月の浦添市長選では「オール沖縄」を掲げる新人候補が大敗を喫し、三選を果たした現職を支援した自公を勢いづかせた。ただその一方で、ここ3~4年の間、11市のうち9市を占めていた自公系の首長は21年5月現在6市に減り、「オール沖縄」の威勢が衰えたわけではない。 玉城知事の任期は折り返しを過ぎ、22年秋には県内政界の天王山たる知事選が予定されている。それまでの間、21年内に必ずある衆院選から22年1月の名護市長選をはじめとする県内の各市長選、次期参院選(22年7月)など、沖縄県内は選挙ラッシュとなる。いずれの選挙でも、「オール沖縄」はその真価を問われることになる。