残酷な戦争を童話で描いた野坂昭如の "ファンタジー" 朗読と音楽で表現『イノチノコト 忘れてはいけない物語』
【川波幸恵(バンドネオン)】 宗像市出身。第1回チェ・バンドネオン世界大会優勝者。福岡女学院、東京音楽大学卒業。劇2020年夏、地元福岡で「タンゴ三姉妹+」を結成。「アストル・ピアソラ国際音楽コンクールトラーニ2021」アンサンブルの部で優勝。 朗読にこんなリズムが乗ってきます。音楽は非常に楽しく、そして悲しく、朗読を盛り上げていきます。 【杉泰輔(コントラバス)】 1971年生まれ。20代後半よりプロとしての活動を開始。福岡市を拠点に活動中。中洲JAZZ、宗像JAZZ、Art-plex熊本などの大規模なイベントへの出演も多数経験している。 ■飢えていく小父さんと象 小父さんと象は、だんだん飢えに悩まされていきます。 (昭和天皇の終戦放送) 「堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キ……」 (朗読) 八月十五日に戦争が終わりました、平和になれば象と象使いは人気者です、しかも、日本には他に象が一頭もいなかったんですから。でも、象は小父さんが死に、そして自分ももうじき死ぬと分かった時、紙のように軽い小父さんの死体を背中に乗せ、ひょろひょろと、どこかへ行ってしまいました。 「象使いなど戦争に役に経たぬ。軍需工場で働けと命令されていたのを逃げたのですから、もどればたちまち憲兵か、警察に捕まってしまいます」(文庫本44ページ)ということで、小父さんは山の中で飢えながら象と暮らしていましたが、亡くなってしまうのです。象も痩せてひょろひょろになってしまいます。野坂昭如さんの発想は、すごいですよね。 そして、今流れてきた音楽は、この「おとがたり朗読劇イノチノコト」のテーマ曲です。矢田イサオさんが作曲しました。毎回この音楽が流れて、物語が始まる。バンドネオンがぐーっと入ってくる。こんな風に音楽に乗りながら朗読が行われる、この「おとがたり朗読劇」。2024年の公演は3回目でした。戦争童話集は12話ありますので、「まだまだこれからも毎年続けていこう」とスタッフ・メンバーの皆さんは心を決めています。またご紹介できるチャンスがあったらいいなと思っています。
■◎神戸金史(かんべ・かねぶみ) 1967年生まれ。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリー制作にあたってきた。やまゆり園障害者殺傷事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー最新作『リリアンの揺りかご』は、9月から各種プラットホームで有料配信中。
RKB毎日放送
【関連記事】
- 「逆らったらクビにされる」ペットショップ”勤務中”に起きた性加害 経営者の男(66)が複数の女性従業員に 裁判で明らかになった支配の構図と恐怖心
- 15年以上に及ぶ路上生活と売春 ”睡眠不足になるほど客をとった” 姉への強盗殺人罪に問われた妹(52) 収入はほぼ知人の女に送金と証言 ふたりの不可解な関係
- 「言うことを聞かないと殺される」12歳女子児童に性的暴行加えた20歳の男 通学路で起きた卑劣な犯罪に、判決は懲役6年6か月
- 「財布がなくなった」女子高校生の相談にゲームセンターの店長がとった”とっさの判断”「靴をみました」
- 将来の総理候補が落選した理由~裏金問題だけではない 自民・武田良太氏(56) 3つの敗因