春はシュンラン、初夏はアワチドリ、日本のランを庭でもっと気軽に!ラン愛あふれる育種家の思い【趣味の園芸1月号こぼれ話・後編】
春の庭にシュンランを
編:シュランは伝統園芸植物の印象が強いです。 山:交配を始めたとき買った株は、ものすごく高価でした(笑)。日本の地生ランは難発芽種子のものが多くて、シュンランも1さやに5万~10万粒のタネが入っていても数十株しか芽が出ないのが普通と言われていました。でも発芽しない理由はエビネで研究済だったので、試しにまいたら、いっぱい芽が出ちゃった。 編:エビネも同じように芽が出にくかったんですか? 山:そうですね。でもエビネだけでも過去に3000交配以上行ってタネをまいてきましたから。その経験から発芽させるための処理方法や加減も簡単にわかりました。 編:発芽率が上がれば価格も買いやすくなりそうでうれしいです。 山:シュンランの赤花の多くは、蕾にキャップなどをして日光を遮らないと茶色っぽくなるんですが、特に手をかけず、庭で自然に咲かせたときでもきれいな赤花が咲くような育種もしました。どんなにきれいでもたくさんあると珍品にならないせいか、昔ながらの愛好家さんたちは欲しくないようです(笑)。エビネもシュンランも、庭で普通に植物を楽しんでいる花好きの皆さんに、長く気軽に育ててほしいですね。 山本裕之(やまもと・ひろし) 育種家 小学生のころに牧野富太郎博士に憧れ、若いころはプラントハンターとして新種や再発見など多数。東京農業大学在学中から約50年間、エビネ、ウチョウランなどの育種を続け、2022年世界らん展日本大賞をエビネで受賞。 ●ウェブだけで読める! 趣味の園芸テキストこぼれ話 『趣味の園芸』編集部によるテキストこぼれ話。最新号の特集や記事に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をウェブ限定でお届けします。