通天閣「干支の引き継ぎ式」中止 60年以上続く行事も社長「苦渋の決断」
通天閣でクラスターが発生すると本末転倒、苦渋の決断です
「ずっと続けてきましたが、今年は中止にさせていただきます」━━。大阪市浪速区の「通天閣」は3日、年末恒例の「干支の引き継ぎ式」を中止すると発表した。現在の二代目・通天閣が完成した1956年から続けてきた行事だが、通天閣観光の高井隆光社長は「多くのみなさまをお招きして通天閣がクラスターになると本末転倒。ずっと続けてきましたが仕方がない。苦渋の決断です」と声を落としていた。 【映像】大阪モデル「赤信号」点灯 太陽の塔・通天閣が赤く灯った瞬間の映像
1956年から続く干支の引き継ぎ、本物の動物が登場する
この式典は、1956年から続く通天閣の縁起行事として親しまれている。毎年、動物園などから本物の動物を招き、動物同士がこの1年の反省と来年の抱負を「ダジャレ交じりの談話形式」で語り合うのが名物となっている。
社長は今年の開催を悩みに悩み続けていた
高井社長によると、今年開催するかどうかは3日まで悩みに悩み続けていたという。「年末のひとときの話題提供をさせていただいて、お茶の間で少しダジャレの口上で笑っていただければと思っていましたが」 しかし、3日に新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪府独自基準「大阪モデル」が非常事態を示す「赤信号」に引き上げることが決定。通天閣も赤色のネオンを点灯して周知させることが決まった。 そして、大阪府もすべての府民に対し4日から15日まで不要不急の外出を自粛するよう呼びかけることなども決まり、高井社長は「正直、ダブルパンチですよ」と力なく話した。
赤信号点灯も悩んだが「痛みを分かち合う」ことを選んだ
通天閣では2007年度から長きにわたり年間100万人以上の来場者をキープしてきたが、今年2月ごろから新型コロナウイルスの影響を受け、緊急事態宣言による休業もあったため入場者数が激減。最近ではGoToトラベルにより入場者が増え、11月は前年比50%まで回復するなど、明るい兆しが見えかけていた時でもあった。 「GoToトラベルによって新世界にも人が増えてきて、期待を胸に年末年始を越えていけるかなとおもっていた矢先の急ブレーキ。赤点灯はインパクトはいいけど、地域経済に与える影響は計り知れない。通天閣も大ダメージなんです」と高井社長。 しかし、大阪府から重症患者病床のひっ迫感を聞くと「痛みを分かち合い、地域のランドマークとして通天閣が赤を点けないとアカン」と考え、苦渋の決断で赤いネオンを点灯させた。