大阪「通天閣」が臨時休業しない理由 地元住民らの思い、取引先の手助けも
大阪「通天閣」が臨時休業しない理由とは 地元住民らの切なる思い
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国的に多くの観光施設などが臨時休業を行っている。しかし、大阪市浪速区の「通天閣」は、時間短縮をしているものの営業を続けている。その理由を聞くと、地元の人たちの切なる思い、そして土産物のお菓子の返品に苦労する取引先の悲鳴を聞いてのことだった。通天閣観光の高井隆光社長に詳しく聞いてみた。 【映像】大阪市のイベント「感染拡大に注意しながら実施」松井市長が定例会見(2020年3月12日)
入場者数は昨年同期比で60%減の現状
大阪を代表する観光施設のひとつである通天閣。筆者が今年の正月に取材した際も、入口では行列がとぐろを巻くほどの人気ぶりだった。それもそのはず、2007年度から長きにわたり年間100万人以上の来場者をキープ。近年、絶好調とされる大阪のインバウンドをけん引してきた存在と言えるだろう。 しかし、新型コロナウイルスの影響による外国人観光客の減少があり、今年2月の入場者は前年同月比で30%下がった。そして、3月に突入してからは60%も下がっている状況だ。 通天閣と同じように、年間入場者が100万人を超える大阪城などの観光施設は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため相次いで臨時休業を行っている。 厚生労働省から発表された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」なども踏まえ、高井社長も臨時休業を含め、今後の営業について悩んだ。そして、結論は時間短縮による営業継続だった。 高井社長にその理由をたずねると「新世界周辺住民のみなさん、そして取引先のみなさんが返品などで困っていると聞いて、なんとか力になれないかと思い時間短縮での営業継続を選択しました」と話す。
地元・新世界から「開けて」の声 営業すれば批判の声をいただくのも覚悟
「通天閣もそうですが、新世界は『街全体がパビリオン』なもんですから。飲食店などをされている新世界の住民のみなさんから『通天閣が閉まったら街全体が休みとなってしまうから、営業してんか』『営業時間短縮はしゃーないけどライトアップは続けてや』という声をいただきまして」と高井社長。 もちろん、ウイルスの感染拡大防止のための臨時休業は大切なこと、各地の観光施設が臨時休業し感染拡大防止に協力することは正しいことと高井社長。しかし「街の声」も大切だ。 通天閣がある新世界は、串カツ店など多くの飲食店がある大阪を代表する繁華街のひとつ。1903年に同所周辺で行われた「第五回内国勧業博覧会」の跡地に、大阪の新名所として、1912年に通天閣と遊園地「ルナパーク」が開業し「新世界」が誕生した。高井社長が「街全体がパビリオン」と例えるのも、そういうところからだろう。 通天閣は、その新世界に立地する。休業すると、街の経済も冷え込み、全体が休業するという印象を与えてしまう。そう考え、時間短縮での営業を選択した。 「もちろん、この時期に営業を行えば批判の声もいただくと思います。最低限の経済活動の維持には街が明るくないと。本当に、本当に苦渋の決断です」と高井社長は話す。