月60件超の請求書をAppSheetで自動作成 岐阜の製陶会社3代目が進めたDX
「簡単に直せるところが利点」
もちろん最初から現場で働く職人に受け入れられたわけではありません。「難しい」と言われると、「もっと入力を簡単にするから」と伝えて、どこが難しいのかを丁寧に聞き取り、入力位置を変えたり、商品一覧の選択順を並び替えたりと細かな調整を続けた結果、まず数人が協力してくれることになりました。 河口さんは「直したいところを自分で簡単に直せるのがAppSheetの利点です」と話します。 その結果、事務担当が毎月2~3日かけて発注書を発行、発送していた作業が1日以内で済ませられるようになりました。 職人からも「スマホからリアルタイムで受注残情報がわかるので、担当者にわざわざ聞きに行かなくてもよくなった」と便利さを実感している声が届きました。
3社の修行経験「生きている」
家業である山喜製陶に戻るまで機械メーカー、通関業、同業の陶磁器メーカーで3年間修業してきた河口さん。当時は早く戻りたいとやきもきしていたといいますが「今となってはすべての経験が生きています」と話します。 AppSheetはアプリの開発をするエディタ画面は既定では英語ベースであり、ツールを使いこなせるようになるまでは慣れが必要です。しかし、メーカーでSEとして働いた経験から比較的早くなじむことができたのだといいます。AppSheetのコミュニティにも積極的に参加することで知見を深めていきました。 今回の業務アプリのほかにも工程別生産日報アプリ、不良報告アプリ、燃料使用量記録アプリなど、5つ以上のアプリを作っています。さらに従業員たちから棚卸のための新しいアプリを作ってほしいという要望も寄せられるようになったといいます。 陶磁器業界はメーカーも減少の一途で、製品供給量が落ち、タイムリーな製品供給が課題となっています。河口さんは「ノーコードツールなどの導入で生産効率を上げて少しでも解決につなげていきたいです。今回のような業務アプリを同業他社にも使ってもらうことで業界全体の発展につなげていければと考えています」と話しています。
杉本崇