空前のメダカブーム 飼育歴30年、第一人者が語る「メダカの魅力」
江戸時代から始まった改良の歴史
野生のメダカは絶滅危惧種だが、改良メダカはそれにあたらない。学校などで飼育されるオレンジ色のヒメダカも実は改良メダカである。 田んぼなどに生息するクロメダカは日本の固有種で、南日本と北日本で大きく二つの種がいるのだが、その中に色素が抜けたメダカが見つかった。それがヒメダカの祖先だ。 そもそも改良メダカはどのように生まれたのだろう。江戸時代に観賞魚としてメダカが人気になると改良が盛んになり、ヒメダカが広く流通し、庶民から愛されるようになった。 「江戸時代には器にメダカを泳がして、それを釣って楽しんだという文献も残っているそうです」 近年、観賞魚飼育が一般的になると、改良はさらに進んだ。繁殖のスピード感も背景にあるようだ。メダカを交配させることで子孫を増やすことができる。メダカは生まれてから2カ月で卵を産むため、わずか1年間で3世代を同じ水槽に共存させることもできる。 「その中で珍しい特徴を持ったメダカ同士をどんどん掛け合わせて、特徴を固定化するんです」
江戸時代から続く改良メダカの歴史の中で、大きな役割を果たした種がいる。2000年代前半に登場した「楊貴妃」はヒメダカをさらに改良した赤みの強い品種で、成長するとさらに発色が強くなるのが特徴だ。水槽の中で泳ぐ姿は美しく、近年のメダカブームの火付け役といえるほど人気が高い。
そして昨今の高級メダカブームの嚆矢(こうし)となったのが「幹之(みゆき)」だ。背ビレから尾ビレにかけて光を持つのが特徴だ。このメダカが登場したことで、改良メダカはさらに飛躍した。 「幹之は美しく丈夫だったからどんどん増えた。この種がいなければ最近人気のメダカは生まれなかったといってもいいでしょう」
戸松の店にも高級メダカが多くいる。自慢の「皇扇体外光(こうせんたいがいこう)」はブラックパープルと呼ばれる品種と、色素を持たないアルビノにさらに体外光という特徴を持つメダカを掛け合わせたものでワンペアなんと10万円。市場価格はどのように決まるのだろうか。 「基本的には作り手が値段をつけます。固定率、表現、あとは希少性。値づけは自由だけど、だいたいは趣味の範囲で出せる金額ですね。ときどき100万円という値をつける人もいるけど、話題づくりや宣伝の意味合いが大きい」 戸松が理事長を務める「日本メダカ協同組合」は毎年愛知で品評会を行っている。1出品につき1000円支払えば誰でも参加できるとあって、品評会を楽しみにする愛好家は多く、毎回数百もの出品がある。珍しく美しい新種メダカには高い価格がつく。