「おおおぉぉぉ」ラグビー早明戦、なぜ名勝負が生まれるのか? 第100回を終えて考える“赤黒”と“紫紺”の歴史「解説席の五郎丸も田村優も…」
「涙を流すために俺はやってる」
情熱の人。そして、周りを巻き込む圧倒的な力は台風の目を連想させる。一方、ピッチでは合理性を突き詰める。今回のメモリアルブックに再録された2006年の記事が興味深い。聞き手は早稲田OBの藤島大さんだ。 ――ラグビーはスクラム。持論ですね。 「スクラムが思い通りに組めたら、必ずどこかに穴があく。そのラグビーの理屈を教えてきたんです。同じ人数で、防御網はFBが下がって、外のWTBもキックに備えている。それで穴ができないはずがない」 ――こう球を動かせばここに穴ができる、つまり球技としてのラグビー研究も清宮イズムの核です。 「もうそればっかりですよ。相手はこうだからここは抜ける。こうしたらこうなる。それをあうんの呼吸でできるようにする。サインには頼らない。立ち方だけ。右に3人、左に2人というような」 ――すなわちセオリー。 「そう。こう立てば抜けるところが2箇所、3箇所で、相手がここを塞いだら、こっちを選択するとか」 このブロックを読んだだけでも、清宮克幸の合理性が浮き彫りになる。ただし、理詰めばかりの人ではない。このインタビューの最後に、こうも語る。 ――魂。ただ合理的なだけでは勝てない? 「それじゃあ、つまらない。何でやるのか。究極は、泣くためですね。涙を流すために俺はやってる。そういうことですよ」 知と熱。 これこそが、大西鉄之祐をはじめとした早稲田指導者の哲学である。 今季の早稲田にも合理の香りが漂う。昨季の大学選手権で京都産業大学相手に完膚なきまでに叩きのめされたFWは(この敗戦を大阪で目撃した私は大きなショックを受けた)、この1年で見違えるほど逞しくなった。コーチ陣の丹念な指導、そして激しいブレイクダウンには学生たちの熱が感じられる。 そして、様々なキックを蹴り分けられる1年生、服部亮太の加入も戦術に大きな影響を与えている。 大田尾竜彦監督は、「亮太のキックに注目が集まるかもしれませんけど、チームとしては夏合宿からキックチェイスを組織的にできるように練習してきました。それがいい方向に出ていると思います」と話している。 服部という存在が、早稲田の歴史を動かそうとしている。これも合理的選択の結果である。
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