「自分が幸せかどうかを見つめて」──トランス女性として活躍するプロデューサーから、次世代へのメッセージ #性のギモン
番組プロデューサーの白川大介さんは、「谷生さんをパートナーに」とプッシュしたうちの一人だ。社内調整は大変だったかと聞くと、「実は、谷生さんが了承してくれてからは、とんとん拍子に進んだんですよ」と言う。 「その何年か前に、作り手をフィーチャーする深夜の5分番組で、谷生さんを見たんですよ。今と限りなく近い姿なのに、テロップが男性名だったので、『テロップが間違ってるんじゃないの?』とネットが盛り上がったんです。そのころは頻繁にお会いするような関係ではありませんでしたが、広い意味で同じ性的マイノリティー当事者として共感していたので、画面越しに『先輩、切り開いてるな、すごいな』と思ったのをよく覚えています。 そのあと、谷生さん自身が『映画天国』枠で『LGBT映画祭』を企画し、出演も果たしていたので、女性としてテレビに出るという実績はすでに積まれていたんです。だから『zero』に出演するときは、承認が必要な人から反対があって行き詰まるということはありませんでした」 白川さんはゲイであることをオープンにしている。2018年の春、社内でLGBT研修が開かれた際に進行役を務め、冒頭で「僕は当事者です」とカミングアウトした。 「谷生さんも見にきてくれて。心強かったですね。僕は彼女のことを、ダイバーシティにおける相棒だと思っているんです。よく話すんですが、谷生さんと僕という、トランスジェンダーとゲイが同じ会社にいて、2人ともわりとスピークアウト(公言)しているというのは、偶然だけど、超よかったよねって。彼女がいなくても何かしらの形で行動したと思うけど、5年、10年遅れたかもしれない。 会社の偉い人によく言われるんですが、性的マイノリティーの話になったときに、うちの会社の人たちは全員、『ターニャとか白川のことだよね』とイメージができるから、それはすごくいいことだって。『それはちゃんとしてあげなきゃいけない』と、身近なこととして捉えてもらえるのが、公表して一番よかったポイントです」 白川さんは、同じテレビ業界を見渡しても、オープンな当事者は依然として少ないと言う。厚労省の調査によれば、「職場で誰にもカミングアウトしていない」と答えたLGBTQ当事者は約8割(「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」2020年)。こういった状況について、谷生さんはこう話す。