3千万円、1億円超の高額な新薬 問われる費用対効果と医師の悩み
神田氏も研究に加わる国立がん研究センター中央病院を中心とした研究班では、薬の適正な継続期間を探る臨床試験を進めている。オプジーボなど阻害薬を使う非小細胞肺がんの治療で、一定期間薬が続けて効いている患者がいったん休薬しても、休みなく治療を継続していた患者と同じだけ効果が続くかを探る。そこには、薬剤費を減らせるかどうかを探る狙いもある。 「治療効果に持続性があると考えられている薬なので、十分効いている患者さんにとっては、副作用のリスクを取ってまで薬を使い続けなくてもよくなる。さらに、この研究で安全に休薬できることが分かれば、患者さんを支える社会的な負担も減らすことができるのです」 医療の高度化で桁違いに高額な薬剤の保険適用が進むなか、現場でも薬剤の適正な利用への模索が続く。高齢化も進み、医療保険財政が膨らむなか、高額薬剤の問題は不断の改善を要する。 前出の二木氏は、高額医薬品の適用を厳格化するために、医療は将来的には遺伝子レベルなど個人差を考慮した個別化医療に進むだろうと言う。 「今後また高い薬が出てきても、薬価は効果に見合った価格に調整されていくでしょう。ただ、調整がうまく機能しているかは、常に目を向けていくべきです」
--- 古川雅子(ふるかわ・まさこ) ノンフィクションライター。栃木県出身。上智大学文学部卒業。「いのち」に向き合う人々をテーマとし、病や障がいを抱える当事者、医療・介護の従事者、科学と社会の接点で活躍するイノベーターたちの姿を追う。著書に『きょうだいリスク』(社会学者・平山亮との共著、朝日新書)