西陣織の老舗「細尾」CEOが語る、時代を超える職人技と美の追求
17世紀から続く西陣織の老舗、京都の細尾は、その巧な技術で伝統を守りつつ、世界的に高い評価を得る現代的なブランドへと進化。12代目の当主である細尾真孝のリーダーシップのもと、西陣織の複雑な技術をアートやファッション、インテリアデザインに適応させ、生産がグローバル化する中で伝統工芸が苦戦を強いられる状況においても、成長を続けている。 「織屋」として創業した細尾の織物を特徴づけるのが、絹糸とともに金銀の和紙を織り込む西陣織の伝統的な技法だ。完成までの20以上の工程に、それぞれを専門に担当する職人たちが携わっており、その中には人間国宝に認定された職人たちもいる。 その細尾は現在、高級ブティックをはじめ、東京のフォーシーズンズやパリのオテル・ド・クリヨンといった高級ホテルなどに、それらを美しく飾る手織りの絹織物を供給している。 代表取締役社長兼CEOである細尾に、現代における「老舗」の運営について、話を聞いた。 ──1688年の創業から受け継いできた伝統を守りつつ、今日的であることをどのように実現しているのでしょうか。また、新たな世代の職人たちをどのように集め、細尾の製品をグローバルなものにしてきたのでしょうか? 伝統と現代的なものに、違いはないと思っています。ゼロサムゲームではないのです。私たち、そして私たちの活動、広がっていく私たちの考え方の根底にあるのは、伝統です。私たちはそこに現代性を取り入れ、ビジネスを展開しています。それらは正のフィードバックループともいえる形で、私たちの核心と伝統に、影響を与えています。 新しい世代の職人たちを引き付けること、それは私たちを美の追求に立ち戻らせます。私は、職人たちはクリエーターだと思っています。つまり、彼らはさまざまな背景や経験を持つクリエーターであり、多様性と偶然の出会いが、織物の分野にとどまることなく、数多くのクリエイティブなアイデアや製品を生み出しています。それらが、クライアントを引き付けることにつながればと願っています。 ──織物について、どのような未来を思い描いていますか? 織物工芸の将来について、関心を持っていることの1つに、織物と私たちを取り巻く環境との関連性があります。ウェアラブル技術が話題になる中で、私たちは西陣織にさらなる機能性を持たせることを目指しました。(2023年には)「Ambient Weaving──環境と織物」と題した展示を(自社ギャラリーで)開催しています。