深刻、雑誌不況 今こそ問われるネットメディアの編集能力
雑誌不況が叫ばれて久しいが、状況は深刻さを増すばかり。今年はすでに100冊を超える雑誌が休刊になっているという。さまざまな業界が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた特異な年ではあったが、雑誌の場合はまさに泣き面に蜂といったところか。一方で、急速な紙媒体の衰退はメディアの編集能力の低下を招き、正しい知識・情報の伝達にとってネガティブなことだという声もある。紙媒体にとってもネットメディアにとっても、いよいよ真価が問われる時代といえるだろう。
不況に強い専門誌も窮地に
博報堂DYホールディングスが9日に発表した同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2020年11月分の売上高速報によると、主要部門ごとの前年同月比で新聞が3%、インターネットが18.5%とそれぞれプラスとなったが、雑誌は52.3%の大きなマイナスとなった。ラジオも12.1%のマイナス、テレビも13.1%のマイナスだが、雑誌のマイナスの大きさは非常に目立つ。一般広告はアウトドアメディアが34.4%のマイナスなど、今年は各業界が新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け企業活動が縮小、その結果広報宣伝活動への支出が減少したものとみられる。しかし出版、ことに情報の鮮度が問われる雑誌にとってマイナス傾向はいまに始まったことではないのも事実だ。 富士山マガジンサービスによると、今年はすでに100誌以上もの雑誌が休刊したという。 「比較的不況に強いと言われた医学・医療系など専門性の高い雑誌も軒並み、窮地に陥っています。ネットの影響だけではなく、そもそも専門性が高いほど購買層も少なくなるのでそれほど部数も出ません。技術的な情報は日々の進歩に合わせてアップデートが必要ですが、それこそネットの得意分野というわけです。趣味性の高いカメラ雑誌も『アサヒカメラ』『月刊カメラマン』といった名門誌がそれぞれ突然の休刊となって長年の愛読者に大きなショックを与えました。かつて雑誌に記事を書いていたライターや写真家もWebやネット動画に活躍の場を移すケースが目立ちますし、広告を出稿していたメーカーもYouTuberをマークしている時代です」(IT系メディアの40代男性編集者)