なぜドーピング潔白が証明された井岡一翔は「絶対に許せない」とJBCへ怒りをぶちまけたのか…検体を腐らせトップは辞任否定
田中が所属する畑中ジムも質問状を送るなどJBCに対し「疑念」を抱いており、先日、開いた会見では、倫理委員会の結論いかんでは「損害賠償訴訟も辞さず」の姿勢を明らかにしていた。今日20日にも顧問弁護士と相談の上、今後の対応を決定するという。 井岡は、歴史に残る名勝負を演じた田中に対して、こんなメッセージを送った。 「田中選手の気持ちだったり、僕に対して、どう思っているかはわからないが、なにも(疑惑は)ないという気持ちはずっとあった。その言葉を信頼してもらえることを今日、立証してもらえた。彼とグローブを交えて、僕が(どう)ボクシングに向き合い、この試合にかける思いを戦って感じてもらえることはある。不正なことをしていて彼に勝つのは無理。正々堂々と戦った試合なんで、それは感じてくれていると思う。今日こうして何もなかったと言えることが一番よかった」 潔白は晴れた。 収まらぬ怒りはあるが井岡はチャンピオンらしく前を向く。 「こういうことになってすごく悔しい気持ちではあるが、自分自身、過去の試合に対して、前回の試合も含めて記録だったり結果だったりにこだわるタイプではない。次に進んでいるので。この試合が傷ついたなというより、自分がなにもないことを証明できたことが一番。潔白を証明できたことで次にもつながった。つねに先のことを考えている。これから試合に向けて集中できる。進んでいくと思う」 そして会見を井岡らしい言葉で締めくくった。 「これまでも自分がやってきたこと、やるべきことは変わらない。応援してもらい支えて下さっている方たちを裏切るようなことはしないし、自分が見せたい光景をこれからも、さらなる高みを目指して見せていきたい。今後とも、応援よろしくお願いします、という気持ちです。ありがとうございます」 この日は、故・白井義男氏が日本人初の世界王者となった「ボクシングの日」だった。しかも日本ミドル級タイトルマッチもあった。一人の稀有な才能を持った4階級制覇王者がボクシング界から抹殺されなかったことは万々歳だが、なぜこんな日にJBCは発表したのか。JBCは、騒動を真摯に総括し、責任の所在を明確にしなければ、“第二の井岡事件”が起きる可能性が完全に消えたわけではない。そして何より「謝罪」だけでなく井岡の傷つけられた名誉の回復に最大の努力をしなければならないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)