パは熾烈なCSサバイバル…またしても2位浮上に失敗した西武に突きつけられている課題とは?
つまり、あと一本を待つのではなく、何がなんでも1点をもぎ取る攻撃を仕掛けられなかった。そして、ソフトバンクは執念を具現化させる形で、3回に先制点をあげている。先頭の8番・甲斐がカウント0-2と追い込まれながら、4つ続けてボールを選んで出塁。9番・柳町の送りバント、1番・周東佑京のセカンドゴロで三塁に進み、2番・中村晃の当たり損ねの三塁内野安打で生還した。 パ・リーグを連覇した昨シーズンまでの西武は、対戦相手を畏怖させた「山賊打線」が異彩を放ち続けた。2018シーズンは総得点、ホームラン、打率でリーグトップをマーク。昨シーズンも総得点と打率でトップを継続し、個人タイトルでも森が首位打者、山川がホームラン、中村が打点、金子が盗塁、メジャーに移籍した秋山翔吾が最多安打のタイトルを独占した。 ひるがえって今シーズンはどうか。チーム打率.237は最下位のロッテをかろうじて上回る5位で、総得点443は4位、ホームラン数は3位に甘んじている。チーム防御率4.28も過去2シーズンに引き続きワーストだが、これは先発が大崩れした試合をあえて“捨てて”大敗を喫する試合が多いためで、接戦を制するための勝ちパターンのリリーフ陣を酷使しない戦いと表裏一体を成している。 残りがわずか9試合となったサバイバル戦で、いま現在の西武打線に「山賊」の面影を求めることはできない。ソフトバンクの先制点のように、相手が与えてくれたチャンスにつけ込む集中力と巧みな試合運びをフル稼働させるしかない。 「負けたなかで、そういうところもプラスに考えて。一生懸命に応援してくれるファンの方も来てくれているわけで、すんなり終わるのか、最後、もう一歩というところまでいくのか。選手のそういう姿は非常にいいし、それがまた明日につながっていくと思うので」 辻監督は前を見すえた。ソフトバンクの2番手左腕・嘉弥真新也を攻め立て、最終的には、守護神の森を引っ張り出した最終回の攻撃が、明日以降の戦いにつながる。チャンスを拙攻で潰し、天を仰いでいる時間は、もはや残されていない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)