妻の浮気?虐待?開業医の夫・85歳母の介護から明らかになった「本当の問題」
『あんたは人の心がわからない』
それから1週間後、連絡があり面談することに。洋一さんは「妻から離婚を切り出されました」と落ち込んだ声を出しています。それによると、先に浮気をしていたのは洋一さんで、結婚20年間の過去5回分の証拠を押さえていました。 さらに母については、妻が細かくケアしており、暴君的な洋一さんから心が離れていることもわかります。ヘルパーと思っていた男性は、39歳の作業療法士で、妻がアドバイスをして、独立開業を準備が進んでいる様子だということ。 洋一さんは「怒りに任せて離婚しようとしたら、思わぬ返り討ちを喰らいました。母からも“あんたは人の心がわからない”と言われて、散々な目に遭っています。僕が全部悪いんでしょうか」と泣いていました。 妻にしてみれば、子育てを押し付けられ、事業をバックアップしていたのに感謝の気持ちも言葉も一切ない夫にあきれていたのでしょう。そんな夫の介護も行う未来があるならば、いつか離婚したいという思いがあったのでしょう。だから、離婚の証拠を押さえていた。それについて黙っていたのは、まだ洋一さんへの愛があったから。 しかし、義母の介護も引き受けるようになり、しかも自分が一緒に病院を大きくしようとしてきたことを否定され、考えが変わったのでしょう。 義母が東京に住むようになったのは、洋一さんが母親の運転免許強引に返納して地元を引き払わせたから。それなのに、洋一さんは母親に対して虐待じみたきつい言葉を発し、妻は見かねてケアをし始めます。そこで人の気持ちがわかる作業療法士の男性と知り合い、惹かれ合うようになっていたのもよくわかります。
「金はあってもひとりぼっちだ」
作業療法士の男性が支えになっていたのは、洋一さんの母からの言葉にも参っていた理由もあったようです。洋一さんの母は、もともと散財する方で貯金がなく、洋一さんが自分のためにマンションを買うことは当然のように受け取り、でも妻が自分の見たことのない服を着ているだけで「無駄使いはやめなさい」と言ってきたのだとか。ちなみに息子たちにお年玉をくれたことは一度もありません。子どもたちも洋一さんの母親に対して距離を置いているようです。 施設に入れるのを反対したのは、実際この性格だといじめられると思ったということ、そして要介護1なので、莫大な費用がかかることもあるようです。これから子供の教育費もかかるのに、頭金に数千万円、月30万円近くかかる施設を避けたかったのもわかります。さらに作業療法士の男性と会い続けたい、ということもあったのでしょう。 おそらく洋一さん夫婦は離婚します。洋一さんは「金はあってもひとりぼっちだ」と言っていましたが、そうなった背景を見つめなおし、改善すればいいのです。そうでなければより孤立を深めてしまうかもしれません。お母さんについても、85歳とう年齢ではなく、まだ60代のまま、洋一さんの中では止まっているようです。現実を見て、適切な施設を見つけられることを心から祈ります。 このように、話し合いがないまま、見切り発車的に介護をしている家族は、多くの問題を抱えます。それが離婚となる場合もあるのです。高齢者とそれを支える人の関係を、社会全体で考えなければいけないと感じてしまいました。 調査料金は130万円(経費別)です。
山村 佳子(探偵事務所代表)