文化庁と埼玉・横瀬町が初協議 国天然記念物の植物群40年間未調査
武甲山(標高1304メートル)にある国指定天然記念物の石灰岩地特殊植物群落について埼玉県横瀬町が40年以上現地調査を実施していない問題で、文化庁の調査官が7日、同町を訪れ、現地周辺を視察するとともに群落保全の取り組みに関して担当者から説明を受けた。未調査報道後、文化庁と町が直接協議するのは初めて。今後、両者は県も交えて指定地の適切な保全のあり方を検討していく。【照山哲史】 【写真】チチブイワザクラ 町を訪問したのは、京都市にある文化庁の天然記念物担当調査官。2016年に現調査官が着任後、初訪問だ。同日午後から町教育委員会職員や採掘会社社員の案内で、群落内の希少植物を保護している町管理の「武甲山特殊植物園」を視察。指定地付近に移動して、周辺の環境や、植物園が増殖と植栽をしているチチブイワザクラの生育状況などを確認した。視察後に、文化庁と町、同行した県文化財・博物館課の職員らが協議した。 町教委の担当者は「町としての考え方や現状の体制などを説明した。本日の話し合いを踏まえ、適切な保全の進め方などを検討していきたい」としている。文化庁調査官は「指定地周辺を視察し、町の取り組みについても話を聞けたので、現地調査の可否も含めて今後どのように保全していくのが適切なのか話し合っていきたい」と述べた。 武甲山北側斜面の一部は、国のレッドリストで、近い将来、野生で絶滅する危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠA類に分類される武甲山固有のチチブイワザクラをはじめ、石灰岩地に適応した貴重な植物が多く生育している。1951年に国の天然記念物に指定されたが、付近は石灰岩の採掘地で、環境変化によりチチブイワザクラが枯渇したため、83年に標高の低い現在の指定地が追加指定され、当初の指定地は解除された。 北側斜面の多くは、採掘会社の事業区域で関係者以外は立ち入りできない。町は追加指定以降、「指定地に立ち入ることが環境負荷を与える」として現地調査を行ってこなかった。このため、指定地内にチチブイワザクラが現在も自生しているかどうかの確認は取れていない。一方、町は指定地の保全を図るため、その周辺を「環境保存区域」と定めて整備し、植物園で増殖したチチブイワザクラを植栽してきた。