【11月1日は「本の日」】やっぱり厚くて重い本が一番面白い!? 第2回「鈍器本」ビブリオバトル!
花田「なるほど、そこに至るまでの教育の話なんですね」 一ノ瀬「著者は社会学者の方なんですね」 三宅「そうですね、澁谷知美さんは、フェミニズムと男性の体を合体させた話をよく書いている方で、『日本の童貞』(河出文庫)などの著作もあります」 一ノ瀬「どんな話が出てくるのかがとても気になりました」 三宅「個人的にめっちゃ面白かったのは、当時の雑誌広告ですね。男子学生に対して『こういうことをすると立身出世できなくなる』みたいなことが書かれているんです。中には『自慰行為をすると立身出世できません』とか、多少の誇張はあるにせよ大真面目に書かれているんです」 一ノ瀬「『自慰をするとバカになる』なんて、今でも言われたりしてますもんね」 三宅「立身出世にまつわる明治の言説って変なものがいっぱいあるんですけど、今でもけっこうその名残があるんじゃないかと思いますね」以上、ノンフィクション、小説、学術書という鈍器本3冊での殴り合い(プレゼン)が終わった。白熱した闘いの結果やいかに!? ■2代目チャンプ鈍器本がついに決定! ここで、現場に駆けつけた聴衆(ライター、編集者、カメラマン含む)5人と、プレゼンター3人(プレゼンターは自分の本への投票は不可)、計8人による投票が行なわれた! 結果発表! ①『東京の生活史』......5票②『兄弟』......1票③『立身出世と下半身』......2票 ......ということで、なんと『東京の生活史』がぶっちぎりの得票で、2代目鈍器本チャンプの栄誉に輝くことになった! 聴衆のほぼ全員が『東京の生活史』へ投票という大人気ぶりであった。 やはり「全部読まなくても大丈夫」とか「ひとり分がすぐ読み終わる」というパワーワードが、未読者の心をガッチリとつかんだようだ。鈍器本のプレゼンにおいては、内容の面白さもさることながら、読書そのもののとらえ方や読むアプローチの仕方をプッシュするのも有効ということがわかった。激戦を経た3人は語る。 花田「憧れの一ノ瀬さん、三宅さんにお会いすることができてうれしかったです! 各『生活史』、本当に面白いのでぜひ手に取ってみてほしいです」 一ノ瀬「いやあ、楽しかったです! 読書の良さを思い出しました。次は勝ちたいのでいつか再戦お願いします!」 三宅「この世にはさまざまなジャンルの鈍器本があることを再確認しました! 楽しかった! 本なんてなんぼ重くてもいいですからね!!」 鈍器本の世界は広くて奥深い......。第2回があったということは、これはたぶん第3回もあるんだろうな......乞うご期待! ●花田菜々子(はなだ・ななこ)書店店主HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEなど複数の書店勤務を経て、2022年に高円寺に蟹ブックスをオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出文庫)などがある ●一ノ瀬翔太(いちのせ・しょうた)書籍編集者2015年早川書房入社、2023年からハヤカワ新書の編集長。『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』(ハヤカワ文庫NF)、『闇の自己啓発』(早川書房)、『人間はどこまで家畜か』(ハヤカワ新書)など、数々の話題書を手がけている ●三宅香帆(みやけ・かほ)文筆家・書評家著書に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『30日de源氏物語』(亜紀書房)、『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー携書)など多数 取材・文/西村まさゆき 撮影/村上宗一郎