【11月1日は「本の日」】やっぱり厚くて重い本が一番面白い!? 第2回「鈍器本」ビブリオバトル!
厚い本で詰まるポイントって難しくて読めないか、合わなくて読めないかどっちかだと思うんですけど、この本はひとり分がだいたい1万字ぐらいで、『なんかこの語り手、エラそうで威張ってるなぁ』みたいに感じたとしても、すぐ読み終わるんです。いろんな人の人生がどんどんスイッチしていくから、読んでてつっかえない。ほかの分厚い本にはない特徴ですね。 あと、『いろんな人の人生が入っている本』と聞くと、未読の人は『どれもかけがえのない人生だ』『生きてるって素晴らしい』みたいなメッセージがある本かなって思うかもしれませんが、全然そんなことはないんです。『いろんな人がいて、いろんな人生があるんだなー』って思えるだけ。 これが重要で、例えば、混んでる道で擦れ違う人や、エスカレーターに一緒に乗る人のことって、特に都会だとノイズというか、『なんか邪魔だな』っていう存在でしかないところがありますよね。でも、この本を読んだ後はそんな人たちも本当はひとりひとりにこの本みたいな話があるんだろうと思える。街の景色の色が濃くなるんです。 分厚いですけどちょっとだけ持ち歩いて、空き時間に30分や1時間ずつ、少しずつ読みたい。そんな本です」 ――ありがとうございます! それではディスカッションに入ります。 一ノ瀬翔太(以下、一ノ瀬)「目次は150人分あるんですか?」 花田「その話するの忘れてた! 150人分あります! これがめちゃくちゃ良くて、聞き手には、『聞き書きした中から一番印象に残った一文を目次にしてください』という指示があったそうです。 例えば......『だから、モチベーションが違うんだよ、俺はもう、他の人とは、競馬に。ただ好きとかあれじゃない。俺は敵討ちだから』とか。この目次を読むだけでも面白いです!」 3年前に刊行されると、各所で話題になった鈍器本『東京の生活史』がいきなり登場。花田さんは続いて出された同コンセプトの書籍『大阪の生活史』(筑摩書房)、『沖縄の生活史』(みすず書房)も持参。 どれもコンクリートブロックほどの大きさがあり、鈍器として十分の風格を備えており、それ以上に本の内容も面白そうで、トップバッターからかなりの強者が出現した。 《プレゼンター ②》一ノ瀬翔太 一ノ瀬「私は、中国の作家、余華の『兄弟』(アストラハウス)という小説を持ってきました。お互い連れ子持ちの男女が再婚してできた義兄弟ふたりの話です。 お兄さんは聡明で文学好きでおとなしく顔もいい。で、弟は悪ガキで下品で腕っぷしが強い。そんな正反対なふたりが、文化大革命時代と、その後に訪れた開放経済時代という、両極端なふたつの時代を生き抜いていきます。