移民流入がもたらすのはインフレ沈静化? インフレ圧力? FRB利下げはどうなる
移民流入による個人消費拡大がインフレ圧力になる?
次に、転職活動の活発度合いを示す自発的離職率に目を向けると、こちらは2.18%、3カ月平均値で2.17%と低下基調にあります。自発的離職率が高止まりしていた2021~22年は、転職時に大幅な賃金上昇が実現していたことから、転職が流行し、それが平均時給の飛躍的な伸びにつながっていました。しかしながら、現在は賃金インフレが鈍化することを示唆しています。過去、自発的離職率が平均時給に対して1年程度の先行性を有してきたことに鑑みれば、労働市場由来のインフレ圧力は今後も和らいでいく公算が大きいと考えられます。移民の急増により安価な労働力が充足されていることが効いているように思えます。
なお、筆者は6月下旬に米国出張の機会を得ました。そこで、移民の流入が米国経済にインフレ圧力をもたらすのか、それともインフレ沈静化に貢献するのか、複数の専門家に質問をしてみました。筆者は、移民が安価な労働力を供給することで、全体の賃金上昇率低下を招き、その結果としてインフレ沈静化に貢献するとの経路を重視していますが、反対に、移民流入による総需要(個人消費・住宅)拡大がインフレ圧力をもたらすことを重視する人も多く、意見は様々でした。ある種の一般論としてトランプ氏が大統領選で勝利した場合、移民の流入が大幅に抑制され、安価な労働力が絞られることで賃金上昇率が加速し、インフレ率が再加速するとの懸念がありますが、実際はもっと複雑な経路になりそうです。あらためて、経済・物価見通しは幅を持っておくできであると痛感しました。
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