日本人の多くが間違っている「本当の血圧」の正確な測り方…高額な「腕時計型の血圧計」が役に立たない理由
健康診断や医療機関で測ると正常値なのに、家庭や職場で測ると高い値を示すタイプの高血圧があります。これを「仮面高血圧」といいます。仮面高血圧には時間帯によっていくつかタイプがありますが、ビジネスパーソンは、昼間の時間帯に強いストレスにさらされることで血圧が上がる「昼間(職場)高血圧」には特に注意です。できれば職場に血圧計を置いてもらうなどして、職場にいる時間も血圧を測るようにしましょう。 ■カフを心臓の高さに合わせて測る また、「測り方」も大事です。一般的な家庭用血圧計には、指先や手首、上腕で測定するものがありますが、最も正確に測定することができるのは、カフつきの「上腕式血圧計」。日本高血圧学会も推奨しています。医療機関でも上腕で測定するため、家庭血圧と診察室血圧で誤差が生じにくいという利点もあります。 なお、腕を筒のなかにスポッと入れるタイプの置き型血圧計もありますが、こちらは測定時に体を傾けることがあるため、カフを巻くタイプのほうがより正確だといわれています。いずれにせよ「医療機器認証」を取得している血圧計を選んでください。 家庭では原則として、朝と夜の2回測ります。 朝は起床して1時間以内に測定してください。ベッドのなかで測ると低い値になるので、起き上がって排尿し(排尿前に測ると高く出る傾向があります)、1分くらい安静にしてから測定します。朝食や服薬、喫煙の前に測るのがポイントです。 夜は夕食や入浴など、やるべきことをすべてすませ「あとは寝るだけ」というタイミングで測定します。ただし夜の測定は朝に比べて時間もまちまちになりやすいですし、お酒を飲む日もあれば、夜更かしをする日もあると思います。続けることが大切ですので、夜の計測が難しそうであれば、まずは朝だけでも測ると決めて継続して取り組みましょう。 測定する環境や姿勢にもコツがあります。 寒かったりうるさかったりすると高く出るので、22~23度の快適な室温の静かな部屋で、背もたれのついた椅子に寄りかかってリラックスします。 測定するのは利き手ではないほうの腕がいいでしょう。素肌、もしくは薄着の上からカフを巻きます。カフが下がってひじにかからないように注意しながら腕をテーブルの上に置き、カフの中心が心臓の高さ(乳頭付近)になるようにします。高さが合わないときは腕の下にタオルを敷いたり、椅子に座布団を敷いたりして調整を。会話や体動を控え、脚を組まずに1~2分安静にしたあと測定します。 そしてさらに1分おいてから、2回目を測定します。1回目と2回目の平均値が「今日の血圧」です。 まずは1週間、少なくとも3日は続けてみて、上が135mmHg、下が85mmHg 未満であれば高血圧ではありません。逆にそれ以上であれば高血圧ということになります。 仮に高血圧だったとしても落胆することはありません。医師の診察のうえで服薬を開始すると同時に、塩分を控えたり減量したりして、血圧を上手にコントロールしていきましょう。それが血管を若々しく保ち、健康を維持することになるのですから。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年12月13日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 苅尾 七臣(かりお・かずおみ) 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授 1962年生まれ。87年自治医科大学卒業。専門は循環器内科学。特に高血圧、動脈硬化、老年病学。著書に『名医が教える 高血圧 自力で下げる方法』(扶桑社)など。 ----------
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授 苅尾 七臣 構成=長山清子