日本人の多くが間違っている「本当の血圧」の正確な測り方…高額な「腕時計型の血圧計」が役に立たない理由
医学の発展は日進月歩。過去に良いとされた習慣が覆されることもしばしばだ。名医たちの最新の知恵で、あなたの“健康常識”をアップデートしよう。 【図表】カフの有無による測定方法の違い ■なぜ「カフあり血圧計」でないとダメなのか 「もし、血圧が高くなってもスマートウオッチが知らせてくれるから安心」「毎朝、家庭用血圧計で測っているから血圧コントロールはばっちり」 こんなふうに思っているとしたら、ちょっと危険かもしれません。なぜなら自分では正しく血圧を測っているつもりでも、そうではないケースが多いからです。原因は主に2つ。 ①計測機器の問題 ②測る時間帯の問題 まずは①から説明しましょう。 最近、スマートウオッチを装着する人が増えています。これは、手首に巻いておくだけで血圧や体温、心拍数などを測定してくれるうえ、スマホと連携して記録までしてくれる機能がついた腕時計です。腕時計型以外にもブレスレット型や指輪型の血圧計まで登場しています。ところがこのようなウエアラブル型の血圧計は、たとえ高額なものでも、いまのところ正しい血圧が測れるとはいえません。 そもそも血圧は、次のように測るのが正式です。 まずカフと呼ばれる腕帯を上腕に装着し、それをぎゅっと締める。そうすることで上腕の動脈を圧迫して一時的に血流をせき止めます。次にそれをゆるめることで、動脈が開いて血液が再び流れ出します。このときに生じる血管壁の振動を計測します。振動が最も大きくなったときの血圧を収縮期血圧(いわゆる上の血圧)といい、振動の変化がおさまったときの血圧を拡張期血圧(いわゆる下の血圧)といいます。 最近のカフ式血圧計はカフ自体にセンサーがついていて、血管壁の振動を検出できるようになっています。このような血圧の測定方法をオシロメトリック法といいます。
しかしウエアラブル型の血圧計は、カフのないタイプのものがほとんど。どうやって血圧を測っているのかというと、電気信号による心拍数の変化測定や光センサーによる血流の変化測定などを組み合わせて、推定で算出しているのです。 カフのないウエアラブル血圧計は、常時装着して24時間血圧を測定できるという点では非常に便利なのですが、正確さという点では、現時点では不十分といわざるをえません。そのため、「スマートウオッチではいつも上が120と出るのに、健康診断では150と出た」というようなことが少なくないのです。 ウエアラブル血圧計で測った血圧をもとに「このところ血圧がずっと120で落ち着いているから、降圧剤をやめてもいいだろう」と自己判断で服薬を中止してしまうと、薬で抑えていた血圧が急に上昇するため、非常に危険です。降圧剤を中止する場合は必ず医師の診察を受けてください。 とはいえウエアラブル血圧計のすべてが不正確なわけではなく、手首でカフが締まるタイプのものであれば比較的正確です。いまのところオムロンヘルスケアとHUAWEIから出ているものしかありませんが、ぜひそちらを使うようにしてください。 ■働いているときだけ血圧が上がる人もいる 次に血圧を測る時間帯の問題です。「血圧は朝、起きてすぐに測るのがよい」といわれています。なぜなら血圧は夜寝ているあいだに下がり、起きると上がります。この落差が大きいと循環器系の疾患を引き起こしやすくなるため、朝の血圧測定が最も重要だということが知られているからでしょう。 しかしその一方で、1日1回、朝、測っただけでは見つけられない高血圧もあることをご存じでしょうか。これを見つけるには、朝と晩の2回、さらに可能ならば昼間も測定したほうがいいのです。