なぜ阪神「2番・佐藤」新打線は機能しなかったのか…中日に3タテを許しての6連敗でワースト記録更新
昨年来、矢野監督が口を酸っぱくして言い続けてきた「オレたちの野球」のひとつが機動力を使った野球ではなかったか。 「何かきっかけが欲しい」(矢野監督)との発想での打線の”大手術”は理解できるし、必要なことだっただろう。だが、この新打線には相手バッテリーが機動力を警戒すべきポイントはない。 機動力にはスランプはないと言われる。昨季、阪神と対戦するチームの先発予定投手のほとんどが「先頭の近本を出さないこと」を警戒していた。阪神の「オレたちの野球」は、近本の1番があってこそ成立するもの。まして相手バッテリーの徹底したマークに苦労している佐藤を「どうチーム貢献すべきか」と考えさせる2番に置くことはプラスにはならない。 ヤクルト、楽天、阪神で名将、故・野村克也氏の薫陶を受けた新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は、この連敗中に「阪神の打者は何を狙っているのかが中途半端。凡打の内容が悪くベンチが何の指示を徹底しているのかがよくわからない」と指摘していたが、ベンチの指示も中日とは対照的だった。 桐敷の立ち上がりを攻めた中日は、1回二死二、三塁で阿部がフルカウントから逆方向を狙い、外角ストレートをコンパクトにライト線へと弾き返した。先制の2点タイムリーツーベース。そして3回にも一死二、三塁から木下が、2番手の尾仲から逆方向の右中間を破る2点タイムリーツーベースで追加点を奪った。 12日の第1戦に逆転勝ちをした際に中日の立浪監督は8回にセンターへ同点タイムリーを放った阿部のバッティングを例に出し「センター中心に打てばチャンスが広がる。あれを教訓にチーム全体でやっていきたい」と語っていた。 チャンスでゾーンの目付を少し上げてボールを見極め、センターから逆方向への打球方向を意識するというバッティングをチームに徹底させたのである。中日打線も、阪神と同じく得点力不足に苦しんでいたが、その中でもやるべきことを徹底してきた成果が出ている。この敵の取り組みにこそ阪神が打撃不振から脱出するヒントがある。