なぜ阪神「2番・佐藤」新打線は機能しなかったのか…中日に3タテを許しての6連敗でワースト記録更新
ID野球で知られる故・野村克也氏は、捕手目線で「最も嫌な打者は打つ打球方向を決めて打席に臨む打者」と語っていた。 ノムさんは打者のタイプをA型(直球狙いの変化球対応)、B型(内外角のコースを決める)、C型(打つ方向を決める)、D型(球種を絞ってヤマを張る)の4種類に分類していたが、配球を考える上でC型が最も厄介で、しかもチャンスで「センターから逆方向の打撃」を意識してくることを嫌っていた。裏を返せば、それがタイムリーを生み出す確率の高い基本なのだろう。 中野と佐藤の2人は柳に徹底して外角の変化球で揺さぶられバッティングをさせてもらえなかった。特に佐藤は、走者を置いた2度の打席ですべて半速球をセカンドにひっかけた。チームは9回無死一、三塁から大山の犠飛で1点は奪ったが、52イニング連続でタイムリー無し。打線の組み替えと同時に阪神がトンネル脱出のためにやるべきことはベンチからの「打球方向」などの指示の徹底ではないだろうか。 関西のスポーツ紙の報道によると、試合後、矢野監督は、「プロである以上“やろうとしたけどできませんでした”というのは変えていかないとダメなところだと思う」とコメントしたという。 何を示唆しているのかは不明だが、もしベンチの指示が空転していることを暗に示しているのではあれば、指揮官が口にすべき言葉ではない。 矢野監督は、先発の桐敷が立ち上がりにつかまると、3回の打席で代打を送った。2回二死二塁で好調の大島を迎えると申告敬遠、0-4とされた3回にも二死二塁で8番打者の京田を申告敬遠して投手・柳との勝負を選ぶ。異例とも言える序盤での申告敬遠を連発し勝利への執念を見せた。その気迫は伝わってきたが、監督が、敗戦の責任を選手に押し付けるようになるとチームの雰囲気の悪さは末期的になる。 ノムさんは「敗窮に勝機を知る」という言葉を好んで使った。 「窮地に立たされても、あきらめなければ活路が開ける」と言う意味だ。 また監督として巨人でV9を果たした故・川上哲治氏が、正眼寺の住職から教えられた「窮して変じ、変じて通ず」という言葉も大事にしていた。 「真剣にやっていれば、必ずいきづまる。それでも一心にやっていれば必ず報われる。報われないのは、そこまでいく真剣さが足りないのだ」という意味だそうである。阪神が今問われているのは、連敗脱出に向けての取り組みの真剣さだろう。 80勝しても63敗するのが野球なのだ。負けたゲームで、いかに真剣に取り組んだかということが長い目で見てチームの強化につながってくる。 今日15日から甲子園に帰って首位の巨人との3連戦である。先発は開幕投手に内定しながらも新型コロナ感染で白紙になった青柳。対する巨人も開幕投手の菅野。阪神は続けて「2番・佐藤」の打線で挑むそうだが、昨年勝ち頭のエースに連敗脱出を託すことになる。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)