やる気が出ない、イライラする…深刻度を増す「男性の更年期障害」不調を一発チェンジする習慣&食材リスト
■サケとアサリを食べ地域活動に参加を 昭和の高度成長期のニュース映像で、朝の満員電車から乗客たちが弾けるように会社に走っていく光景を見たことがあるかもしれません。当時の日本人は、ビタミンDが豊富なサケを、毎日のように食べていたからではないでしょうか。また亜鉛は、アサリやシジミなどの貝類に豊富。これも日常的に摂取する食の環境がありました。 今は電車に乗っている会社員を見ても、当時のような覇気はありません。食が変化してビタミンDと亜鉛の摂取量が減ってきているのと、無関係ではないように思います。 ほかに良い食材は、羊肉、牛肉、卵、ヨーグルト、ニンニク、ブロッコリー、ほうれん草、バナナなど(下表)。また、テストステロンを体内でつくるためには、糖質やコレステロールが不可欠です。糖質制限ダイエットはもってのほか。腹八分目の法則にしたがって、自然な食生活を心がけてください。 なお、先ほどもお話ししたように、テストステロンは、人や社会から評価されることで増えることがわかっています。休みの日は引きこもらずに、地域活動に参加したり、少年野球のコーチを引き受けたり、仕事とは別のコミュニティに積極的に参加するのがいい。労力を提供することで感謝されたり、褒められたりする、これがテストステロンを増加させるからです。 またお酒も、楽しく飲めるならむしろいいくらい。若い頃の記憶を呼び起こすことも、テストステロンを増やすといわれています。ハーバード大学のエレン・ランガー教授は、25年前の環境を再現した部屋で、高齢者男性に過ごしてもらうという実験をしたことがあります。それだけで彼らには元気がよみがえり、車いすで来たのに、歩いて帰った人もいたそうです。同窓会など、昔を思い起こさせる機会は、面倒くさがらずに出席するのが賢明です。 それでももし男性の更年期障害になってしまったら……。メンズヘルスの専門医がいる病院を探して、診断を受けるのが一番です。病院では、テストステロンの直接注射のほか、漢方薬を処方する治療も行われています。 部下から「妖精さん」などと陰口を叩かれている存在感のない男性上司が、実は更年期障害だったというケースもあります。彼らが生む経済損失を減らすため、男性の更年期障害の検査を全社的に行おうという動きもあります。更年期とは、終わりのときではなく、チェンジして再出発するとき。つぎなる人生に備えましょう。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年12月13日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 堀江 重郎(ほりえ・しげお) 順天堂大学医学部教授、医学博士 1960年生まれ。日米の医師免許を取得し、米国で腎臓学の研鑽を積む。2003年帝京大学医学部主任教授、2012年より順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学主任教授。順天堂医院泌尿器科長。腎臓病・ロボット手術の世界的リーダーであり、科学的なアプローチによるアンチエイジングに詳しい。日本抗加齢協会理事長、日本メンズヘルス医学会理事長。著書に『うつかな?と思ったら男性更年期を疑いなさい テストステロンを高めて「できる人」になる!』(東洋経済新報社)、『LOH症候群』(角川新書)『寿命の9割は「尿」で決まる』『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)、『二階から目薬』(かまくら春秋社)などがある。 ----------
順天堂大学医学部教授、医学博士 堀江 重郎