【密着ルポ】最後(?)のプロ野球トライアウト 野球人生を懸けた男たちの喜びと嘆き「意思表明の場。それだけでも意味があると思う」
所属球団から戦力外通告を受けた参加者たちにとっては野球人生を懸けた勝負の場であり、それを見守るファンにとっては秋の風物詩となっているトライアウト。その存続に今、黄信号がともっている。「もはや意義は失われた」とする否定派の耳に、選手たちの思いは届くか? *年齢は11月25日時点 【写真】トライアウトに参加した選手たち * * * ■NPBが終了意向、選手会は継続を希望 「12球団合同トライアウトが今回で最後になる」 そんなニュースを最初に目にしたのは今年8月のことだ。2001年にスタートし、今年で数えること24回。主催者のNPBは、各球団での持ち回りが3周した区切りの年であること、スカウトは年間通じて戦力外になった選手のプレーを見ており、トライアウトで獲得される選手が減少傾向にあることなどを理由に、「開催の意義は失われている」との考えを示した。 しかしその一方で、日本プロ野球選手会は「トライアウトをやる意味はある」と続行を望んでいる。選手会の森忠仁事務局長が言う。 「海外や社会人、独立リーグなどからスカウトが来ていることもあるし、お世話になった人たちに最後の姿を見せる引退試合としての性質もある。NPB側の意思は確認していますが、選手会としては、参加する選手たちの意見を聞いてみてから今後の方向性を考えたいと思います」 そして11月14日。24年の12球団合同トライアウトは快晴のZOZOマリンスタジアムで開催された。 参加は投手33人、野手12人。主な戦力外選手のうち中日・中島宏之、阪神・岩田将貴(まさき)、加治屋蓮(かじや・れん)、DeNA・石川達也、楠本泰史(たいし)らは参加を見合わせたものの、午前10時30分、3420人の観客に見守られながら、投手ひとりが打者ふたりと対戦する実戦形式のシート打撃が始まった。 「ZOZOマリンの真っさらなマウンドに最初に足跡をつけられたことが一番うれしかった」と振り返ったのは、二刀流選手の小林珠維(じゅい/ソフトバンク育成・23歳)。最速147キロで連続三振を奪った後、打者としても右中間へのツーベースヒットを放ちアピールした。 「投げて打ってと、少年野球みたいな気持ちでやれました。トライアウトに意味はないと僕はまったく思っていなくて。シーズンで評価されていなくても、少しでも爪痕を残して『あいつやっぱりいいよな』って気持ちにさせることができると思ってプレーしていますし、ホークスのユニフォームでのプレーをお世話になった人たちに見せられる最後の機会でもありますからね」