「マジで悲惨すぎる…」被災の画像、実はディープフェイクだった 高まる生成AIの悪用懸念にどう向き合う?
今から2年前の2022年9月26日未明、ツイッター(現X)に突然「水害」の画像が投稿された。 【写真】「トランプ氏が刑務所の独房に悲しげに…」指示によって偽画像が簡単に 生成AIがアメリカ大統領選を混乱させる?すでにSNSで拡散も
ある画像は多くの民家が水の中に沈んでいるように見える。建物の屋根や樹木のてっぺん辺りまで濁流に漬かっているようなものもある。いずれも高い位置から見下ろす構図で、大きな被害を感じさせる内容だった。投稿者は「ドローンで撮影された静岡県の水害。マジで悲惨すぎる…」とコメントしていた。 静岡県は当時、台風15号による記録的な大雨に襲われたばかりだった。画像は衝撃的な場面として、瞬時にインターネット上で拡散。数千件のリツイートがあった。しかし投稿者はその後、別の投稿で画像は生成人工知能(AI)を使ってつくったものだと明かした。 AIの進化により、巧妙な偽の画像など「ディープフェイク」の脅威が高まっている。私たちはどう向き合えばいいのか。現状と課題を探った。(共同通信=中川亘) ▽災害現場に混乱の恐れ、人命救助で懸念も 静岡のフェイク画像は、イギリスの新興企業が手がける画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」でつくられたとされる。投稿者は当時「今までの投稿から、自らの投稿が広まるとは思えなかった」とし、謝罪した。はっきりとした目的や計画はなかったという。
ステーブル・ディフュージョンは利用者が単語や文章でつくりたい画像を指示すれば生成される仕組みで、専門知識がなくても使うことができる。こうした画像生成AIには多くの種類があり、世界中に利用者がいる。 危機管理サービスを手がける「スペクティ」(東京)は災害が起こると、顧客である自治体や企業にとって必要な情報を瞬時に収集し、提供する。情報源は交流サイト(SNS)の投稿、気象データ、河川カメラなどさまざまで、中でもSNSは被災地の状況を速やかに把握するのに役立つという。 ただ関係のない過去の災害の画像が今の出来事として投稿されるなど、SNSには正確かどうか分からない情報もあり、精査は欠かせない。これまでスペクティでは多くのフェイク画像を分析してきたが、村上建治郎最高経営責任者(CEO)は静岡の水害の事例で「潮目が変わった感じがする」と話す。手軽に画像をつくり出せる生成AIが注目を集めたためだ。