「マジで悲惨すぎる…」被災の画像、実はディープフェイクだった 高まる生成AIの悪用懸念にどう向き合う?
特にフェイクの悪影響が懸念されるのは選挙だ。2024年にはアメリカのバイデン大統領を装った音声で、大統領選予備選の投票を見送るよう促す電話がかけられる問題が発生した。人気歌手テイラー・スウィフトさんが、トランプ前大統領を支持しているかのようなフェイク画像も出回った。スロバキアでは2023年、政党党首とジャーナリストの偽の会話音声などが、接戦の選挙に深刻な影響を及ぼしたという。 各国の法規制の動きでは、イタリアが有害なディープフェイクに3年以下の懲役を定めるなどの厳罰化を検討。イギリスは性的なフェイクである「ディープポルノ」の作成を違法とする考えだ。 三菱総研の飯田正仁研究員は偽情報の流通をなくすことは不可能だとして「ウィズフェイクの時代」に入ったとの見方を示す。フェイクの存在を前提に、被害をできるだけ抑えることが重要で、日本では「まずフェイク検知などの技術対策やルールづくりを進めることが重要だ」と説明する。特に技術対策では世界をリードできる素地があるという。中長期的には情報の受け手のリテラシーを高めることが必要とも述べる。
▽進化する技術、自律性を備えるAI AIの進化は止まらない。新たな技術の一つとして注目を集めるのは「AIエージェント」だ。自律性を備えているのが特徴で、利用者が明確な指示を与えなくてもAI側で意図をくみ取り、自ら戦略を練ることができるという。 三菱総研はこうした技術が悪用され、フェイクがさらに高度になるリスクにも警鐘を鳴らす。例えば「この人は上司を装ったメールにひっかかりやすい」「この人には仕事の締め切りの時期に合わせて仕掛ける」とAIが個人ごとにフェイクの方法を計画し、実行する―。こんなイメージだ。 ウィズフェイク時代では、私たちの情報への向き合い方も大きく変わりそうだ。飯田氏は、信頼できる情報源を考えておく必要があるとした上で「情報を手に入れる経路をインターネットだけにせず、多角的にすることも対策になり得る」と話す。高橋怜士主任研究員は「基本的なことかもしれないが、ある情報を賛成・反対それぞれの立場から見たり、他の人に考えを聞いてみたりすることが、処方箋になるのではないか」と述べた。