「馬は一緒に働くビジネスパートナー。お荷物とは言わせたくない」 名馬たちの個性をプロデュースし、引退馬ビジネスに革命を起こすヴェルサイユファームを訪ねて(前編)
〝馬のセカンドキャリア〟が注目されている近年、「引退馬が余生を送れる牧場」として北海道・日高町に開場されたYogiboヴェルサイユリゾートファームは、寄付や預託料の支援が中心だった引退馬ビジネスに革命を起こしている。牧柵を壊すダービー馬タニノギムレット、絵を描く砂の王者ワンダーアキュートをキャラクタ―化したり、新たな価値を生んでいる。彼らが収益を生んで〝自活〟する運営を目指す岩﨑崇文社長は「馬は一緒に働くビジネスパートナー」と胸を張り、乗馬として再調教するインドア(屋内馬場)の建設を目標にクラウドファンディングも実施中。余生ではなく、今を生きる引退馬の可能性を模索し続けている。(文・大塚美奈) ◇ 取材に訪れた日はヴェルサイユリゾートファームの休場日だった。 2002年の日本ダービー馬タニノギムレット、05年の菊花賞2着馬アドマイヤジャパン、障害の名馬オジュウチョウサンなどのスターホースをはじめ集団放牧されるサラブレッドを自由に見学できる場所は競馬ファンの聖地となっているが、この日は看板猫のほっけとコアラがおしゃれな場内カフェでのんびりくつろぐばかりだった。 初冬の冷たい風を逃れた部屋は十分に暖かったが、取材場所のカフェに少し遅れてやってきた青年は「寒かったですよね」と暖炉に薪をくべ手際よく火を起こした。 馬の仕事に携わっていることを想像させる引き締まったスレンダーな体形と気遣いにあふれたフットワークの軽さ。牧場スタッフだと思った人物は〝ヴェルサイユ〟を注目の牧場に押し上げた岩﨑崇文社長だった。 「普段から馬の出し入れや手入れもしています。人もいないので」と淡々と笑う32歳は、40頭近い繫養馬たちの世話を夏は午前3時に起床してスタッフと一緒に行う。さらに住人ならぬ〝住馬〟の個性をアピールできるアイデアを常に考え、グッズ制作やPR戦略など企画会議にも余念がない。 多忙なスケジュールに「24時間じゃ足りない」と苦笑しながら、「馬の手入れとかしているときに一番アイデアが浮かぶんですよ。新しいものを作ったり考えたりするのが楽しいし、みんなと同じことをしてもおもしろくない」と穏やかに答えた。
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