Jリーグトップになった“サッカーど素人”が語る、経営と「おいしい干し柿」の共通点が秀逸すぎてぐうの音もでない
● 「天日干し経営」が有効な場面2 トラブルや不祥事に直面したとき 有事のときにも有効だ。DAZNの配信初日に配信トラブル(編集部注/2017年のJリーグ開幕戦の中継がまるまる90分間映らなかった)が起きて、大混乱に陥った。こうした不測の事態にこそ、「天日干し」は有効だ。まさに「犬と記者は逃げると追って来る」し、「隠し事は雪だるまのように大きくなっていく」。 Jリーグチェアマン在職中はさまざまな不祥事が起きた。クラブやリーグでのハラスメント、不正経理や横領事案、交通事故などなど。しかしすべてに開示を心がけてきた。違反行為そのものよりも、隠ぺいした組織にはきわめて重いペナルティを科した。「人に言えないことはやらない」という約束事があれば、ルールブックは厚くならずに済む。 自然界の天日干しで雑菌やダニなどの増殖が防げるように、企業経営でも健全経営に天日干しは不可欠だ。リスクマネジメントには風通しが重要だ。心地よい風が社内に吹くようになっていくプロセスそのものが、文字通り企業風土の改善なのだ。 ● 「天日干し経営」が有効な場面3 イノベーションを起こしたいとき 変革に迫られたときに、足を使って現場を回るということは自らを開示していくプロセスにほかならない。
また、社内での関係性が開いていれば、従業員から「反動蹴速迅砲」(編集部注/『キャプテン翼』の必殺シュート「反動蹴速迅砲」に、中村憲剛と大久保嘉人が挑戦。Jリーグ職員がその動画をアップしたところ、1週間で400万再生を達成した。ここから筆者は、映像著作権を放送局に渡さず自前で持つことの重要性を知った)のような改革のヒントが湧き上がってくる。 経営者が大きな声で「改革」と叫んでも簡単にアイデアが出るわけではない。「新事業をやろう。この指とまれ!」と叫んでも誰も動き出そうとしないことも多い。ありたい姿を語り、現状の課題をオープンにして、ミッシングリンク(連続性・継続性が欠けている部分)は何かを伝えること、そして心理的安全性が保障されてはじめて組織は動くものだ。 また閉じた小部屋に閉じこもっていては、世間の環境変化にさえ気がつかない。リクルートでの議論ではないが、組織間で人が流動してはじめて情報は流れてくる。 組織の浸透圧や社会との垣根の高さも見直す必要がある。企業が「社外取締役」を積極的に登用し始めたのも経営の最高機関を社会にさらすことで環境適応力を高めようとする知恵だろう。