Jリーグトップになった“サッカーど素人”が語る、経営と「おいしい干し柿」の共通点が秀逸すぎてぐうの音もでない
リクルートから畑違いのJリーグチェアマンに就任した村井満氏が掲げる経営方針が、「天日干し経営」だ。「天日干し経営」とは、経営の実態を関係者の前にあえてさらけ出すことで、不祥事を防ぎながら健全な経営を目指す手法だ。村井氏が語る、経営者やリーダーに求められる姿勢とは。※本稿は、村井 満『天日干し経営:元リクルートのサッカーど素人がJリーグを経営した』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「降り注ぐ関係者の視線」に あなたの組織は耐えられるか 「自然界の天日」が「降りそそぐ太陽」だとすれば、「経営における天日」は「降りそそぐ関係者の視線」と位置づけられる。閉鎖的な経営が関係者にさらされた場合、雑菌やダニに当たる隠ぺいした不祥事は立ちどころに駆逐される。陰ながら努力を続けていた経営が関係者にさらされた場合、旨味に当たる経営成果は「日の目を見る」ことになる。 経営にとっての「関係者の視線」は「顧客の声」だったり、「仕入れ先の真意」だったりする。また「株主の要望」や「地域社会の期待」などの形で降りそそぐこともある。時には経営者にとっての関係者は社外だけでなく「従業員」のこともある。 縦割りの組織は時に社内であっても、タコツボのように他部署に閉じている場合がある。「風通しが悪い」状況だ。そうした組織ではおいしい干し柿はつくれない。要するに、組織や働く人々に対して、常に関係者の視線が降りそそいでいる状況が大切なのだ。 「天日干し経営」において「天日」を仮置きしたところで、次は「どのようなときに『天日干し経営』は有効か」という導入タイミングや環境状況を考察した上で、「どのように天日に干すか」という方法論を論じてみたい。
● 「天日干し経営」が有効な場面1 新しい場所でチャレンジするとき まずは、誰もがピンチと感じるときは「未知との遭遇」だろう。いわゆる「転校生」の心境だ。 素人チェアマンが就任したとき、「命を賭して」と会見で述べたように、過去の経験則も通用しないし、逃げ隠れもできない、ごまかすこともできない状況では、勇気を出して自分をありのままにさらしていくこと以外に道はない。 自分をさらすことには勇気が必要だが、そのレベルは「命を賭して」という表現が誇張ではないくらい難易度は高いものだ。失敗は恥ずかしいし、何事も不安だし、自己嫌悪に陥ることもある。とっさに自らをさらせるものではない。 だからこそ、常日頃から天日に干すことの重要性だけは認識しておく必要がある。逃げてもいいのだが、自分が逃げたことを認識できていれば次につながる。「おい、村井満。逃げたな。誰も気がついていないが、俺は村井満が逃げたことを知っているよ」と自問自答する。 問題なのは「天日干し」の重要性を認識せず、無意識に逃げ続けていることだ。自己をさらすことは「傾聴」につながり、助言者が現れる。10年活躍する選手に共通するようなリバウンドメンタリティも身につけることができるようになるはずだ。ピンチはチャンスと実感できるようになればしめたもの。「未知との遭遇」を楽しめるようにもなる。