定年後の出家を支援、ホテルと同居、介護施設を運営……ジリ貧の「葬式仏教」寺院が取り組む「最先端ビジネス」
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社会人リタイア組に空き寺を託す
「臨済宗は修行のハードルが高く、一般人がお坊さんになるのは厳しい。そこで臨済宗妙心寺派では、『第二の人生プロジェクト』として、休憩を多めに設定するなど、ややマイルドな修行をしてもらう試みで、社会人リタイア組のお坊さんを募集しています」 専門道場での1年以上の修行を終えると僧侶となれる。各地の空き寺を紹介されて住職にも就任でき、穏やかな余生を過ごせるのだ。妙心寺派側には、年金で経済的に余裕のある人に多くの空き寺を託して残したいという思惑もある。 浄土宗では過疎化で消滅寸前の寺と都市をつなぐ施策が功を奏している。 「島根の過疎地域である石見地区では、約50ある浄土宗寺院が『墓を地元に残したまま首都圏で暮らす檀家さんとのご縁を大切にしよう』と、東京・増上寺で『石見教区東京法要』を毎年開催しています。信徒が増えたり結束力が高まったりと一定の効果を上げているようです」(鵜飼氏) 参加者は400名に及ぶ年もあり、石見地区まで帰れないお年寄りが孫に支えられながら参りに来ることもあるという。
寺とホテルが同居する
寺の生き残りには、境内を用いて他業種と結びついていくことも大きなポイントとなる。 たとえば、高野山や信州善光寺などの大寺院の境内には、一般人も宿泊できる旅館のような宿坊がある。 京都河原町駅徒歩1分にある浄教寺(浄土宗)は、「寺院の再生」を目的にホテルを誘致した。 「築200年が経過した建物の老朽化によって寺の存続が危ぶまれていましたが、元銀行員の住職が、寺とホテルを一体化させる事業で再建に成功しました。'20年に開業したこの『三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺』は、1階にはホテルロビーと本堂や寺務所、2~9階に客室があります」(鵜飼氏) 寺院合体型ホテルのモデルは広がりを見せつつあり、'23年には大阪・御堂筋沿いの三津寺(真言宗)が、カンデオホテルズと一体化したビルを建築。ホテル宿泊者向けの、「朝のお勤め」などの体験プランが好評という。