定年後の出家を支援、ホテルと同居、介護施設を運営……ジリ貧の「葬式仏教」寺院が取り組む「最先端ビジネス」
介護施設の運営が良策
元国税査察官の住職で、『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』の著書もある上田二郎氏は、寺と親和性の高い施設を経営するのが良策と語る。 「税理士の私が考える寺院の数少ない生き残りの道は、介護施設の運営です。税制面で言うと宗教法人は公益法人等に該当し、老人福祉施設の運営が可能なので、寺院と介護施設の親和性は非常に高いんです。 大きな寺院が中心となり介護施設を運営し、近くにある寺院の跡継ぎも雇用する。若手僧侶も利用者と日常的に接することができ、僧侶としてのホスピタリティーなどのスキルを活かせます」 実際、浄土真宗の単立西栄寺(大阪市)は、介護施設「お寺の介護はいにこぽんのいえ」を運営している。デイサービスとサービス付き高齢者向け住宅を境内に併設し、在籍僧侶のうち約半数が介護資格を有する。
お坊さんの介護なら……
介護福祉事業部長を務める吉田敬一氏が語る。 「月参りや布教で訪ねていた檀家さんの訪問介護から始めました。『わしは介護なんて受けたくない』と介護拒否してご家族を困らせていた人でも、『お坊さんだったら……』と素直に受け入れてくれることもありました。 法話や説法という宗教色の強いことはあえてしていませんし、宗派にもこだわりません。どんな宗教の方にでも利用していただいています。 介護をしている家族の方と介護の大変さを共有できることが大きなメリットですし、ケアマネジャーや栄養士など専門職の方も一緒に働いているので、お寺が活性化し、組織としての連帯感も生まれています」 浄土真宗を興した親鸞はこんな言葉を遺した。 「証といふは、すなはち利他円満の妙果なり」 さとりとは利他の境地であり、他人の利益のために尽くすことが自分の幸せにつながるのだ。 仏教が生き残るために、いかに人々の心に寄り添えるかが問われている。 「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より
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