「3分間だけ時間をください」トゥレット症の僕を変えた授業前のスピーチ
そう考えた僕は、次の新学期から、自分について説明する時間を3分間だけもらえないかと、各講義の担当の先生にお願いすることにしたのです。 そして、各講義の学期最初の授業で、次のような挨拶を繰り返しました。 「皆さんはじめまして!酒井といいます。突然ですが、僕はトゥレット症という病気を持っています。授業中に自分の意思とは関係なく身体が動いてしまったり、大きな声を出してしまったりすることがあります。もしかしたらびっくりさせてしまうかもしれません。 自分でも迷惑をかけているのはわかっているので、気になることがあれば遠慮なく僕に言ってください!もし言いづらいことがあれば、担当の先生に言ってくれてもかまいません。でも、こういう風に普通に話すこともできるので、もしよければ一緒に授業を受けてくれると嬉しいです!」 新しい講義が始まるときは、知らない人もいるだろうからと、いつも同じように冒頭で挨拶をさせてもらいました。教授のマイクを片手にしゃべるのは緊張しましたが、回を重ねるにつれて、自分を説明することに慣れていったように思います。
僕と他のみんながお互い半年間安心して授業を受けられるように学校側がそういう時間を設けてくれたこともありがたいですし、みんなの貴重な授業の時間を少しもらえたこともありがたく思っています。 こうした試みがうまくいったのかはわかりませんが、「周囲の学生が“あの人は声を出していて不思議だ”といぶかしんでいる」という報告を受ける機会は減っていきました。 もうひとつ、サークルに入ることで、次第に友達ができていきました。 僕が入ったのは、ボードゲームサークル、ポケモンサークル、イラストサークル、そして鬼ごっこサークルの4つです。コロナ禍に入ってからは実際に集まることができなくなったのが残念でしたが、いまだにこのときに出会った友達は、オンラインやリアルで集まってはゲームをする仲間であり続けてくれています。 ● 大学時代に抱いた素朴な疑問 「他の人には、どうして病気がないんだろう」 他の人には、どうして病気がないんだろう。 そんな素朴な疑問を抱くようになったのも、大学時代のことでした。 逆に言えば、どうしてそんな基本的なことをいままで考えなかったのか、自分でも不思議です。 そう思うようになったきっかけは、大学でこれまで以上に多くの人々に出会ったことでした。