脳科学者が解説。人間のなかに眠る「10の才能」とは
【H 対人的知能】 対人的知能とは、相手の立場で考える能力で、コミュニケーションのうまい人が持ち合わせている才能です。他人の意図や要求、感情を理解する能力、人に共感することが得意です。この知能が優れた偉人は、貧しい人々に生涯を捧げ、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサが有名です。 対人的知能は、営業職やレストランやホテルの接客、各種のサービス業など、純粋に人と接することが好きな人は持っていることが多い傾向があります。子どもが好きな人、休日は人と会う予定を入れる人も、この能力が高い可能性があります。会話中や電車に乗っているときに、第三者を見て「この人は何を考えているのか?」とつい考えてしまう人も、対人的知能が高いといえるでしょう。 【I 内面的知能】 聞き慣れない言葉かと思いますが、内面的知能とは、自分を深く理解する能力のことです。私もこの仕事をするまでは、まったく知らない才能でした。自分の感情や長所短所、将来何になりたいのか、そのために取るべき行動などを把握する能力をいいます。 子どもの頃から妄想好きな人や、マイペースで周りが見えない人は、内面的知能が高い可能性があります。内面的知能が高い人は、自分の理解を深めていくのが大好きです。研究者気質で、一人で黙々と活動するのもOK。部屋にこもりきりの仕事も、苦になりません。 世界的に有名なラルフ・ワルド・エマーソンなどの哲学者、思想家、人生の意味を伝える牧師やお寺の住職、心理学や自己成長に興味がある人も、この能力の持ち主だと考えられます。私自身もこの能力が高いことに、30歳を過ぎて気づきました。 【J 博物学的知能】 博物学的知能とは、簡単にいうと「分類の才能」です。同じ種類をまとめる、あるいは違う種類を見分ける能力です。たとえば、わかりやすいのはブランド品や骨董品の鑑定士でしょう。見た瞬間に本物と偽物の区別ができてしまいます。身近な例では、植物の名前に詳しい人も同じです。道端に生えている雑草をパッと見て、普通の人には「どれも同じ」に見えてしまうかもしれません。しかし、博物学的知能が高い人は、植物同士の共通点と違いがすべてわかるため、まったく違う植物として見分けられます。 それ以外に、動物や世界遺産に詳しい人や、ワインや切手、フィギュアやコスメのコレクター、鉄道マニアなども、博物学的知能が高い人が多くなります。意外なところでは、自然保護活動に熱心な人も、博物学的知能の持ち主である可能性が高いことです。自然の素晴らしさとは、多様性の素晴らしさ。樹々の色合いや花の香りから、季節の移ろいを感じる―博物学的知能が高い人には、そういった感受性の強さがあります。 進化の系統を分類し、『種の起源』を発表したチャールズ・ダーウィンはその典型です。米国のアル・ゴア元副大統領のように、自然好きが高じて環境保護活動に熱心な人もいます。 『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』 向いている仕事、自分の強み、進むべき道を考えて、自分で、自分がわからなくなる……。こうした「自分探し」で悩む人へ、200以上の論文と7つのワークで、科学的にブレない自分軸を見出す「自己理解の方法」を解説する。¥1,815/PHP研究所 西剛志/Takeyuki Nishi 脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて2万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』など海外を含めて累計38万部突破。
TEXT=西剛志