【百年料亭】国宝・彦根城の城下町で肩肘張らない老舗の味を楽しむ
御料理 伊勢幾(滋賀県彦根市)
江戸時代の天守閣が残る城のうち、国宝指定の城は全国で五つある。中でも保存状態が最も良いと評価を受けるのが彦根城で、城を囲む景色もとりわけ美しい。西に琵琶湖を望み、東の鈴鹿山脈の緑がこの町を包む。徳川譜代筆頭・井伊家の居城で、どことなく品格を感じさせるその城の近くに明治10(1877)年創業の「伊勢幾(いせいく)」がある。 1世紀半の歴史を紡いできた料亭が大切にしてきたのが地元産品。鮎に松茸や鴨、地の近江野菜など季節の食材の名が上がる。すきやきなどの近江牛料理も人気を博すが、名物は創業当時から変わらないという「鯉こく」。伊勢幾のものは骨ごと煮込んだ荒々しい姿ではなく、鯉の身とアラでとったダシを白みそで溶いた汁仕立て。鯉のうまみが堪能できる上品な逸品だ。
建物は大正時代のもの。玄関を上がると古き良き「粋」を感じる空間が広がり、地元では昭和初期あたりまで「伊勢幾で結婚披露宴をすることがステータス」だったそう。料亭には今も敷居が高いイメージが残るが、伊勢幾では手ごろなランチもある。また2016年には奥座敷を一人でも楽しめるカウンター席に改装し、職人が客の目の前で天ぷらを揚げる「てん幾」をオープン。「肩肘を張らず、気軽に伝統の味を親しめるように」との六代目の心配りがありがたい。 400年の城の甍(いらか)に150年の味。この街には老舗のたたずまいが似つかわしい。 (データ) 伊勢幾 【所在地】〒522-0089滋賀県彦根市錦町4-23 【電話】0749-22-0063 【営業時間】11時~14時、16時~20時 【定休日】不定休 【駐車場】有 ※百年料亭ネットワークは、「建物及び周辺施設等が百年以上の歴史」を持ち、さらに今も営業を行っている料亭同士がネットワークを組み、古くから続く日本料理の文化を守っています。また、それぞれの家風や仕来りを継承しながら、これからも地域の老舗として大いに飛躍すると共に、お互いの交流や国内外からの誘客を促進し地方都市の活性化に資することを目的としています。