30年前の築地市場、米国人記者はどう伝えたのか、当時の日本は巨額の貿易黒字を計上
取扱高は1日23億円、取引されていた魚介類は1日約2400トン
広い市場の床にずらりと並んでいるのはクロマグロ。東京都中央卸売市場の一つだった築地市場で、競りが始まるところだ。日本版が創刊してまもない1995(平成7)年11月号の特集「世界一の魚市場 築地・魚河岸」に掲載された。 ギャラリー:瀬戸際の巨大魚たち タイトルに「世界一」とあるように、当時の築地市場で取引されていた魚介類は1日約2400トンと世界一を誇り、取扱高は1日当たり23億円に達していた。広さ約23万平方メートルの巨大市場には、6万人もの人々がひしめき、3万2000台の車両が行き交った。 この頃の日本は巨額の貿易黒字を計上し、市場が閉鎖的であると他国から批判されていた。しかし、築地市場は国内最大の魚介類の輸入元で、市場関係者は貿易黒字の削減に一役買っていることを誇りに感じていたようだ。「クリントン大統領(当時)は私に勲章をくれるべきですよ」と関係者の一人は言って笑った。米国産のウニを取り扱っているという。「私なんか毎朝3時に起きて、アメリカからの輸入品を買っているんだ」 そんな活気あふれる市場は、2018年に東京都江東区の豊洲に移転した。同特集の掲載からおよそ30年たった今では、築地市場の跡地は更地になり、工事用の白いフェンスに取り囲まれている。 この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2024年12月号に掲載されたものです。