ビタミンD、亜鉛、カルシウム…。不足しがちな重要栄養素は魚に頼るべき理由(専門家が監修)
スーパービタミンとも呼ばれ、生活習慣予防、メンタルヘルス維持に役立つビタミンD。遺伝子の合成や皮膚の健康維持に関わる亜鉛。いずれも重要な栄養素だが、実は日本人は不足しがち。そこで、積極的に取りたいのが魚介類だ。健康にいいイメージに違わず、不足しがちな重要栄養素がしっかり摂れる魚介類に再注目。[取材協力/西塔正孝(女子栄養大学栄養学部教授)]
回遊魚のイミダペプチドで疲労回復
マグロにカツオ、サンマにイワシ、サケにマスなど、決まった季節に長い距離を移動する回遊魚のスタミナは渡り鳥のそれに匹敵する。彼らのスタミナの秘密はイミダゾールジペプチド、略してイミダペプチド。 鶏の胸肉に多く含まれる物質として広く知られるようになったイミダペプチドは強力な抗酸化作用を持つ抗疲労成分。この物質の働きによって渡り鳥は何千キロもの行程を飛び続けることができるという。で、回遊魚のカラダにも同じくイミダペプチドが含まれている。 「アンセリンやカルノシン、鯨から発見されたバレニンもイミダゾールジペプチドのひとつです。長い距離を泳ぐ鯨やウナギなどにも豊富に含まれています」 魚のイミダペプチドがそのまま疲労回復に繫がるかは未だ研究段階。が、効果を期待して食したい。
水産動物のイミダゾール化合物含量(mg/100g)
竹内昌照ら編『水産食品の事典』朝倉書店(2000) 西塔正孝ら:液体クロマトグラフィーによる数種魚類のアンセリン及びカルノシンの測定, 女子栄養大学紀要, 35,(2004)より
スーパービタミン、ビタミンDを確保
カルシウムの吸収を促すという働きで知られるビタミンD。近年ではこの他、免疫力の向上や糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防、メンタルの健康維持などにも関わっていることが報告されている。 別名・スーパービタミンとも呼ばれるビタミンDは、きのこや卵黄などに比較的多いとされているが、メインディッシュとしてのタンパク質食材では肉より魚に軍配が上がる。食肉には100g中0から多くても0.数㎍なのに対して、多くの魚類には数㎍以上のビタミンDが含まれている。日本人は慢性的なビタミンD不足ともいわれているので、一日一度の魚食は習慣にしたいもの。とくにビタミンDは脂溶性なので脂の乗った魚が狙い目だ。 ちなみに、ビタミンDは日光に当たることでも体内で合成されるので、肉食だらけの日には積極的に外出を。