【解説】コメ異例の品薄に価格1.85倍も それでも「やっと生産可能な額」 関係者たちのホンネ
◆小売り業者のホンネ「安定供給の重要性、見直した」
実際に新米の入荷のめどがたったというスーパーも出てきています。都内のあるスーパーに聞いたところ、今までは、精米日から1か月や2か月経った、通常のスーパーでは出さないコメを安く買って仕入れ、足りない場合は問屋から追加で仕入れる方法を取っていたと言いますが、今回の品薄騒動は「コメの安定的な仕入れの重要性」を見直すきっかけになったと言います。 「安定供給というのはこれからやはり大事かなということで、安定供給してくださる先を探した」 今月、農家直送でコメを販売する会社と新規に契約し、早ければ10月以降、店の需要の7割ほどを継続して入荷することになりました。店頭販売価格は上がってしまうものの、お米が棚に並ぶことを優先するようにしたということです。 「(新米の価格は)1.5倍ぐらいはいってるんじゃないですかね」「お米があるということの方に今は価値を置いているので」 また、ようやくお米が並ぶようになった小売店の間では、「新米の陳列場所」に関するこんな「ホンネ」も聞かれました。通常なら入り口近くに置いているというコメの棚を、店の奥の方に変更しているという都内のスーパー。その理由は… 「通りすがりの方に“お米がある!”って買っていただく形じゃなくて、常連さんに買っていただきたいなっという思いで」 ようやく仕入れた新米を常連客に買ってもらいたい、転売目的で買われるのを防ぐという意味合いもある、と「異例の事態」への対応を語りました。
◆年々需要が減少してきたコメ 今後の供給は…
取材を進める中で、生産者、集荷業者、卸売り業者、小売り業者それぞれのホンネが見えてきたと同時に、「共通の声」も見えてきました。一つは「価格の乱高下は避けたい」という声です。生産者やJAとして、生産コスト上昇分をようやく価格に転嫁できるようになった状態は喜ばしいけれど、この先の価格動向がまったく読めず、不安な気持ちも強いといいます。生産者の中からは「国家の根幹である米を国が、国家の食糧安全保障という観点からも、乱高下をさせてどうするんだよ!1万円だったり2万円だったり、こんなのないでしょう」と政府のコメ政策に対する厳しい声も聞かれました。 もう一つは、「これからも米を食べ続けて欲しい」という声です。近年、年間でおよそ10万トンずつ、国内のコメの需要量が減少を続けていた中で、今年は10年ぶりにコメの需要量が増加に転じました。農水省は今後も需要の増加傾向が続くのか、それとも再び減少に向かうのか、現時点では判断できないとしています。 関係者が予期していなかった形でコメが注目されることとなった、今回のコメ品薄騒動。取材した生産者からは、「消費者にコメが行き渡らない事態を招いてしまったことに関しては残念」とするものの、「コメの大切さ、コメという存在を考えてもらうきっかけになった。そういう意味でかえって良かった可能性もあると思う」という声もあがりました。 日本人の主食であるコメが安定的に供給されるために、見直すべきことは何か、生産者、流通に関わる業者、消費者、政府は「のどもとすぎれば…」でなく考えていく必要があります。