【解説】コメ異例の品薄に価格1.85倍も それでも「やっと生産可能な額」 関係者たちのホンネ
◆集荷業者のホンネ「少しでも高く売りたい」 理由は…
取材した千葉県のJAでは、8月23日から直売所で新米の販売を開始し、5キロの精米が1日100袋ほど売れていく状況で「全然品薄という状況ではない」と語ります。 ただ、お盆を過ぎて新米が入ってくる前は、近年付き合いのなかった業者や新規の業者から「取引できないか?」という問い合わせが多数入り、「品薄」を感じたと言います。しかし、その時点で在庫があったとしても売り先はほぼ去年の秋の時点で決まっており、「回してあげたくても対応ができなかった」と実情を明かしました。 一方で、スーパーなど一部の小売りにまだ並んでいないという世の中の状況については「なかなか“値決めができない”のも一つの要因ではないか」と分析しています。 「20年ぶりの高値ということで、どこに価格の設定を持っていっていいのか、あまり高すぎると売れないとか、いろいろあろうかと思いますので、その辺でちょっと苦慮している点があるのかなと」 6月末時点では比較的緩やかだったコメ類の消費者物価指数の上昇率ですが、7月末にはコシヒカリ以外のうるち米が18.0%、コシヒカリは15.6%上昇し、いずれも20年3か月ぶりの上げ幅となりました。取材したJA関係者も「今年のコメの相場は1週間、2週間で全くガラリと変わったという状況」として、急な価格の上昇に集荷業者だけでなく、卸売り業者、小売り業者も戸惑っていると話しました。 今年はこの先の価格動向も読めず、非常に売りづらいとしながらも、「生産者のためにも、少しでも高く売って生産現場へ還元したい」という「ホンネ」も語っています。
◆卸売り業者のホンネ「高止まりが続けば“コメ余り”も」
「20年ぶりの高値」という今年の新米の価格について、9月4日、農水省で開かれたコメの販売状況等に関する意見交換会では出席した多くの卸売り業者から懸念の声があがりました。 参加者の一人は、今年の新米は去年の2倍にあたる「1俵(60キロ)=2万4000円~7000円ぐらいの値付けになっている」とした上で、「それがずっと一人歩きしてしまえば消費者が購入できる価格ではなくなってしまう」と警鐘を鳴らします。コメの価格がもう少し下がらないと、外食向けなどで今まで国内産を使っていたところも外国産米を使用するなどの対策を取ることになり、結果として国産米の需要を低下させてしまい、「(国産米を)買い切れない」=国産米を余らせてしまう状況を招く恐れがある、と見ています。 農家の手取りの問題もあるが、想定以上に上がっていて、適正な価格とは言えないとの見方を示しました。ただ、会議の中で他の参加者からは「現在の高値は端境期の取引価格で、今後は年間の需要を反映したものになる」と価格は落ち着いてくるとの見方も示されました。 また、今の品薄状況に関して卸売り業者から聞かれたのは、「小売り業者への新米の出荷は例年より前倒しで順調に行われている」と強調する声です。また、卸売り業者や集荷業者の手元には5年産米(古米)の在庫もまだあるのに出さないのか?という疑問の声もあることに対しては「在庫は確かにあるが、それは業務用で契約をしている取引先に渡すためのもので、家庭用に仕向けるわけにはいかない」として、「(消費者には)もう少し待てば潤沢に出回ってくるので、もう少し待ってもらいたい」と求めました。