ハラスメント問題続出の映画界 白石和彌監督が問うアプデの必要性
ハラスメント以外にも課題 変化する環境とお金の問題
そこにはハラスメント以前にも解決に取り組まなくてはならない課題があるのでは、という。 「若い人がすぐ辞めてしまうのはそれだけ日本の映画界が魅力的な業界じゃないってことです。リスペクト・トレーニングひとつとっても専門家にやってもらいますからタダじゃないわけで、予算500万円で撮るインディーズが毎回それをできるかっていえばできないわけです。韓国のKOFICのようなものや、より手厚い行政の補助金などがあれば、たとえば100館以上の上映する映画はリスペクト・トレーニングを必須にしたり。その代わりにその映画についてはトレーニングの経費を補助しますよ、とか。それだけではなく、人材の育成もちゃんとそのお金でやりますよとか、各撮影所に育児所を作りますよとか、働く環境を変える方法はいろいろやりようが出てくると思うんです。逆に言えば意識があってもお金がないと難しいことは多いんですよね」 映画を囲む環境は絶えず変化し続けており、コロナ禍になってからはとくに配信での映画視聴がいよいよ定着してきた感もある。作品を作る側として変化は感じているのか。 「僕の場合、意識としてはさほど変わらないですね。配信でしかやらない作品ならまた違う作り方があるのかもしれないですけど。ただ映像作品っていろんな可能性を秘めているので、たとえばネットフリックスが4Kで作ったり、ドルビーアトモスにしたりしているのは最高の環境で観てもらいたいという思いがあるからで、映画館でもかけられるスペックは当然あるわけですよね。作る側としてはどんな状況でも最高の環境で作れるようにまずは努力をすることを変わらずやるだけです」 そして「むしろ過渡期にあるのは配給ではないか」と語る。 「現場で働いている方たちは別に配信のドラマだろうが映画だろうが、やること自体はそんなに変わらないのでそこの人材の取り合いになっているだけで『配信だから仕事しないよ』っていう方は会ったことないです。むしろ過渡期といえるのは配給だと思います。配信との関係。日本映画製作者連盟が劇場でかけてから何ヵ月か空けないと配信しちゃいけないなどありますけど、いずれ配信と公開が同時な作品ももっと増えていくんじゃないですか。それはビジネスとして選択肢が増えることだと思います。配信と公開の同時を選択する人もいれば、時間を開けてから公開もしくは配信することを選択する人もいたりと、作品を多くの方に見てもらうための戦略で変わる。それは作品ごとに考えればいいことだと思います」 ハラスメント問題はもちろんだが、映画に携わる人々がさまざまな面で意識をアップデートしていかなければならない必要に迫られている。 (写真と文:志和浩司) 【死刑にいたる病】 櫛木理宇氏の同名小説(ハヤカワ文庫)を原作とするサイコサスペンス。24人もの若者を殺し死刑判決を受けた連続殺人鬼・榛村大和(阿部サダヲ)から冤罪証明の依頼が届いたことを機に筧井雅也(岡田健史)が事件を調べ始めるが、やがて残酷な真相にたどり着く。共演はほかに岩田剛典、中山美穂ら。