母親の虐待で“全盲になった”31歳女性。現在も「改名前の名前を聞くと身体が硬直します」
風間茉凪(まな)さん(31歳)は、母親からの虐待が原因で全盲となった、いわゆる虐待サバイバーだ。児童相談所の一時保護所などを経て、現在は企業で健康管理を行うヘルスキーパーとして働いている彼女は、今年10月1日からvoice marcheの認定上級カウンセラーとして同じく虐待をされている子どもたちに向き合う。 風間さんの苛烈な半生については、彼女が著したKindle書籍『私は、母親の虐待で全盲になりました』に詳細を譲るが、本記事においては、虐待サバイバーたちが“保護のその後”もなお闘い続けなければならないものの正体に迫る。 ⇒【写真】現在はともに暮らす犬猫が心の支えになっている
双子の兄は「まったく虐待を受けていない」
風間さんが持つ虐待の記憶は根深い。母親の虐待が始まったのは、5歳くらいからだったという。驚くことに、双子の兄はまったく虐待を受けていない。その理由は詳らかになっていないものの、こんな経緯があったという。 「私は生まれつき目の病気があります。増殖性硝子体網膜症という病名なのですが、これによって小学校6年生のころには左目が見えなくなっていました。母は私によく『あんたは優しくしてもらえていいわね』と怒鳴っていました。周囲の大人たちから配慮してもらえる私に、何かしらの感情があったのかもしれません。 また、祖父母との2世帯同居でしたが、祖父は血が繋がっておらず、そうした複雑な家庭環境だったのも、母にとってはストレスだったのかもしれません。あるいは私は覚えていないものの、父には酒で酔うと母を殴るなどのDV傾向があったらしく、そうした不満のはけ口として、私がいたようにも思えます。さらに言えば、母には祖父から殴られるなどの虐待を受けた経験がありました」
母から殴られ、全盲になってしまう
どの推論も一定の説得力を持つ。とはいえ母親の風間さんに対する暴力は、八つ当たりの範疇を大幅に超えたものだった。 「素手で殴る蹴るは当たり前ですが、ハンガーで何十発も殴打されたり、ピンで乳首を刺されたり……。それまで見えていた右目が見えなくなったのは、母からの外傷によるものです。高校受験を直前に控えたある日、母から逆さ吊りにされ、殴られたのです。眼の手術はしたのですが、徐々に見えなくなり、とうとう全盲になってしまいました」 ここまでの暴力が横行していながら、家族は誰一人気づかない。当然、家の外にいる大人が気づくまでにはかなりの時間を要した。 「母は決まって、私と2人きりのときを狙って虐待をしていました。だから虐待の現場を見た家族はいません。とはいえ、家族内に関心を向けていれば、容易に気づけたのではないかと私は思っています。演技の上手な母は、家の外では“模範的な母親”とさえみられていて、しばしば『こんなに優しいお母さんで羨ましい』などと言われたものです。当然、家のなかの出来事は”秘め事”であり、私は誰にも打ち明けることができませんでした。全盲になってからもむしろ勢いを増していく母からの虐待に、私はただ耐えるしかなかったのです」