母親の虐待で“全盲になった”31歳女性。現在も「改名前の名前を聞くと身体が硬直します」
「悪気がない言葉」で悩んでしまう人が大勢いる
家族には絶縁を言い渡したという風間さんは、日本に根強く残る家族観に疑問を提示する。 「特に日本においては、家庭円満であることを最上の善とする傾向が強いと思います。そのため、虐待を受けてきた人に対して、『親もたいへんだったんだから、わかってあげてほしい』という理解を求める圧力をかける人がいます。言った人は悪気がなく放った言葉だと思うのですが、何も知らない人が虐待サバイバーが経験してきた恐怖を矮小化する結果になりかねないと思います。事実、許せない自分が悪いと考えて悩んでしまう人は大勢います」 これからカウンセラーとしての船出を迎える風間さんには、こんな矜持がある。 「当事者目線で、『あなたは悪くない。親のことは関係なくあなたは幸せになっていい』ということをきちんとまっすぐ伝えていけたらと思います。一般の人たちが考えるよりもずっと、虐待サバイバーは自分を責める傾向にあります。自分を大切に思えない傾向もあります。囚われているところから解放できるように傾聴し、一緒に解決策を考えていきたいと思っています」 視力を失わなくても、人生において光を失いかける瞬間はある。全盲であるうえに母親からの恒常的な暴力を被弾してきた風間さんの本籍地は、まさに奈落。だが同じ境遇に喘ぐ者たちのため、あるいは自らの人生の再建のため、彼女はカウンセラーとして社会で生きる道を選んだ。光を失った先で見つけた光。耐え難い苦痛の記憶を昇華させ、風間さんはきっと誰かにとっての光明となる。 <取材・文/黒島暁生> 【黒島暁生】 ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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