発達特性のある人が「 円滑なコミュニケーション」を図るための4つのポイント
ADHDやASDといった発達特性を持ち、人間関係に苦労している人は少なくないでしょう。発達障害当事者である中村郁さんは、仕事の上でもプライベートでも円滑なコミュニケーションを図るために心掛けていることがあるといいます。その中から4つのポイントについて、書籍『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』より紹介します。 人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
一番立場の弱い人に寄り添う
仕事をする上で私が最も大切にしていること。それは、その場にいる一番立場の弱い人に寄り添うことです。仕事関係で、人が何人か集まると必ず上下関係が生じます。私が一番年下、立場も下のときはそれでいいのですが、もし自分よりも年下の人や立場が弱い人がいるときは、私はその人の心に最も寄り添うことにしています。 その場にいる一番立場の弱い人に寄り添うのは、私自身がいじめられた経験があり、発達障害ゆえに人とうまくコミュニケーションが取れず、辛い思いをしたことがあるからです。 新人の頃、周りからきつく当たられ、涙した出来事がありました。同調圧力からか、その場に居合わせていた親しい友人さえ、声を上げてくれることはなく、私は孤立しました。 しかし、そんなときでも寄り添ってくれた人、守ってくださった人がいました。そのことは、ずっと私の記憶から消えることはありません。その人のためなら何でもしたい。20年以上経った今でも、感謝の気持ちを忘れることはありません。 私は指名でお仕事をいただくことが多いのですが、今、私を指名してくださるディレクターさんは、以前、先輩からめちゃくちゃに怒られていた当時ADだった人たちです。 ある仕事のオファーをいただいたとき、「僕が一人前になったら、中村さんにナレーションをお願いしようと思っていたんです! やっと夢が叶いました」と、伝えてくれた言葉に、私は涙が出そうになりました。この人と仕事がしたい。そう思ってもらえていたことを知り、本当に嬉しかった。 仕事で最も大切なのは人間関係です。たとえ表面上のコミュニケーションがうまくても、利害ばかりを求めて上にはへいこら、下には偉そうにする人のところからは、仕事や人は去っていきます。 たくさん傷ついてきた私たちだからこそ、弱者の私たちだからこそ、傷ついている人、弱い人の気持ちに気づくことができるはずです。優しさを広げていきましょう。それはいつかきっと、あなたのもとに返ってきます。