宇宙初期、予想超える多くの巨大ブラックホール 東大・国立天文台が発見
銀河の中心の巨大ブラックホールが宇宙初期に、従来考えられていたより50倍も多くあったことが分かった、と東京大学と国立天文台の研究グループが発表した。昨年観測を始めた「ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡」による、120億~130億光年かなたの狭い視野のデータから、予想外に10個を発見した。巨大ブラックホールが当時さまざまなタイプの銀河にあり、急成長していたこともうかがえた。巨大ブラックホール誕生の仕組みを探る上で、重要な成果となった。
ブラックホールは極めて強い重力を持つ超高密度の天体。一般相対性理論で、周囲の時空がゆがみ、光さえ脱出できないとされる。重い恒星が一生の終わりに大爆発を起こし収縮してできる。また、多くの銀河の中心には、太陽の100万~100億倍もの重さの巨大ブラックホールがあるが、その誕生の詳しい時期、仕組みなどはよく分かっていない。人類が住む天の川銀河(銀河系)の中心にも、巨大ブラックホール「いて座Aスター」がある。 光は到達するのに時間がかかるため、例えば人類が望遠鏡で100億光年離れた天体を観測することは、その天体の100億年前の姿を見ることになる。銀河やブラックホールも同様に、遠くのものを調べれば、過去の状況の理解につながる。
ただ、遠方のブラックホールは観測が難しい。120億~130億光年離れた(つまり120億~130億年前の)巨大ブラックホールは従来、地上の望遠鏡を使い、巨大ブラックホールが周りの物を飲み込む天体「クエーサー」の輝きを捉える方法で見つけてきた。この方法では、同じ時代の銀河の1000分の1の数しか見つからないため、宇宙初期に巨大ブラックホールは非常に少ないと考えられてきた。
米欧とカナダが運用するジェームズウェッブ宇宙望遠鏡により、遠方宇宙の赤外線観測の感度が大幅に向上した。そこで研究グループは同望遠鏡の観測データを調べ、120億~130億年前の185個の銀河のうち10個から、巨大ブラックホールの存在を示す特有の水素のサインを見つけた。従来の知見からは、同望遠鏡の狭い視野では計算上0.2個、つまり全く見つからないと見込まれており、予想外に50倍もの数が見つかったことになる。