プライベートクレジットの老舗が苦戦-市場にとっての警戒シグナル
(ブルームバーグ): フランクリン・テンプルトンのジェニー・ジョンソン最高経営責任者(CEO)がリンクトインへの投稿で、欧州のプライベートクレジットの雄であるアルセントラの買収に興奮を隠しきれない様子だったのは、わずか2年半ほど前のことだ。 現在、アルセントラのダイレクトレンディング(直接融資)事業は、その熱狂を正当化する状態にない。
アルセントラは全盛期にはアレス・マネジメントやインターミディエイト・キャピタル・グループ(ICG)といったプライベートクレジット業界の成功者と肩を並べ、欧州企業への融資で優位性を競っていた。しかし、かつてのライバルが猛烈な勢いで資産を拡大しているのとは対照的に、アルセントラは縮小している。
フィッチ・レーティングスによると、アルセントラはピーク時には約430億ドル(約6兆5000億円)の資産を運用していたが、 フランクリンが同社を買収した時点では380億ドル。現在は約320億ドルに縮小している。ブルームバーグ・ニュースが同社の開示情報を分析したところによると、プライベートクレジット事業の中心である企業向けダイレクトレンディング事業の規模は2020年の120億ユーロ(約1兆9000億円)から60億ユーロへと半減している。
1兆6000億ドル規模に急成長を遂げたプライベートクレジット市場で、ブラックロックやステート・ストリートなどの大手資産運用会社が買収の機会をうかがっている中、アルセントラは業界にとっての教訓的な事例となっている。
22年のフランクリンによるアルセントラ買収はブラックロックによるHPSインベストメント・パートナーズ買収とは比べものにならない規模で、売却価格の低さは売却前に抱えていた問題を反映していた。問題は現在も続いており、老舗でも立て直しが難しい場合があることを物語っている。
アルセントラは19年に、当時として欧州最大規模のダイレクトレンディングファンドを立ち上げたが、その後にリーダーシップ交代の失敗、人材の流出、幾つかの投資の誤りが重くのしかかり、5年後の今も継続ファンドに資金を集めようとしている。