プライベートクレジットの老舗が苦戦-市場にとっての警戒シグナル
アルセントラの広報担当者は、22年11月にフランクリンによる買収が完了して以来、同社の運用資産総額は「安定」しており、ダイレクトレンディング以外の事業分野では「強い勢いと業績」を維持してきたと述べた。「過去12カ月に複数のファンドの資金調達を成功裏に完了したほか、ストラクチャードクレジットおよびスペシャルシチュエーションでの資金調達に大きな進捗(しんちょく)があった。また、欧州流動性クレジット戦略への資金流入も見られた」と説明した。
しかし、同社のダイレクトレンディングファンドの苦境は、プライベートクレジットという資産クラス全体に警鐘を鳴らす。同業他社のリターンに追随できないファンドや、人材を失ったファンドは、新規資金の獲得が困難になっている。投資家は、プライベートキャピタル業界の最大手企業が約束する安定性にますます引き付けられている。
パートナーズ・グループのプライベートデット責任者、アンドルー・ベリス氏は業界全体について「問題を抱える企業が増えている」と指摘。「淘汰が進むだろう。それは長い時間をかけて起こり、ある時点で振り返って見て『大手だったあの企業はどうなったのだろう』と思うことがあるかもしれない」と語った。
アルセントラは、アレス、ICG、アークモント・アセット・マネジメントといった同業他社とともに、欧州のダイレクトレンディングにいち早く参入した。しかし、業界が成長を遂げ、かつてウォール街が独占していた収益性の高い企業向け融資ビジネスにプライベートレンダーが参入するようになったにもかかわらず、先駆者であるアルセントラは苦戦を強いられている。
ライバル企業が100億ユーロを優に超える資金調達をターゲットとし、ダイレクトレンディング部門を拡大する一方で、アルセントラの同市場向けの最新ファンドは4年以上前にルクセンブルクで登録されたが、これまでにそのファンドが何らかのマイルストーンに到達したという公式発表は行われていない。