ボクシングの全日本新人王に沖縄旋風!
プロボクシングの第63回全日本新人王決定戦が23日、後楽園ホールで全12階級にわたって行われ、MVPに選ばれたスーパーライト級の吉開右京(19、島袋)、ライト級の小田翔夢(18、琉球)、バンタム級の新島聖人(20、帝拳)と、3人の沖縄出身者が、KO、TKO勝利で新人王に輝き、異例の沖縄旋風を巻き起こした。リングサイドに顔を見せた元WBA世界ライトフライ級王者、具志堅用高氏、元WBC世界スーパーライト級王者、浜田剛史氏ら7人の名世界王者を生んだボクシング王国に復活の気運が出てきた。 残る大会2賞のうち技能賞は、スーパーフライ級の福永亮次(30、宮田)、敢闘賞はスーパーフェザー級の粟田祐之(25、KG大和)が選ばれた。 ボクシング界のオコエだ。アメリカ人の父と日本人の母のDNAを持つ小田翔夢のパワーが炸裂した。スイッチを駆使しながら幻惑、クリンチでうまく距離をつぶしてくる石井龍輝(19、船橋ドラゴン)のスタイルにてこずり、3ラウンドにはワンツーを浴びてマウスピースを吐き出した。 だが石井がそのことを指摘して隙を見せると、コーナーに追い込むように突進。ワンツーを浴びせて一発目のダウンを奪う。「マウスピースはずっと使っている古いものなので、そのうち打たれて飛ぶと思っていました。レフェリーが何もストップをかけていなかったので、かまわず攻めました」。 ペースをつかむと、4ラウンドに電光石火のアッパーをたたきこみ、石井は崩れるように二度目のダウン。レフェリーはここで試合を止めた。 「あれは練習してきたパンチ。僕のパターンを読まれていたようなのでアッパーを使う形に変えました。嬉しいです」。訥々と小さい声で喜びを表現した。これで5戦5勝、全KOである。 沖縄県立南部農林高校の3年生。終業式を終えてから後楽園に来た。小学5年からボクシングを始め、翌年には、Uー15で優勝するなど頭角を現す。アマ戦績は5戦3勝2敗だったが、17歳になると同時にプロ転向。来春の卒業後は、自動車の整備関連の会社に勤めながらボクシングを続けることを決めている。 その魅力的なパンチ力は大きなタコになって巨大化している人指し指と中指の拳にある。 「板を素手で叩いて作った」という、まさに鉄の拳だ。 趣味はスケボー。プロはだしで、一時はスケボーで東京五輪を狙うことも考えたとか。 元WBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太がスケボーが得意だったが、天性ともいえるバランス感覚、運動神経が、そのDNAに刻みこまれている。 父は、沖縄の基地に赴任していたアメリカ人だが、物心ついた頃には、離婚していて顔も知らない。 それでも「ここまでこれたのは、間違いなくそれ(父の遺伝子)のおかげだと思う」という。 「でも」と、小田は続ける。 「もっと大切なのは努力。頑張ったものだけが勝利を手にできる」 目標は、もちろん、世界王者である。 「テクニックはロマチェンコ、メイウェザー、勢いはパッキャオ。フィリピンの英雄であるパッキャオは心もいい人。ああいうチャンピオンを目指したい」 スピードが、やや物足りず、コンビネーション技術やディフェンス面も未完成の荒削りだが、まだ18歳。無限の可能性を秘めている。