ボクシングの全日本新人王に沖縄旋風!
試合を終えた小田がグローブも外さず観客席で見守ったのが、同じく沖縄の島袋ジム所属、吉開のスーパーライト級の試合だった。両者はアマチュア時代に対戦。その際、小田がRSC(KO)で勝利している。 吉開は、東日本で殊勲賞を獲得していた大野俊人(20、石川・立川)をスタートから圧倒。3ラウンドに連打で崩すと、左フックを振りぬき、大野をキャンバス上で大の字にさせた。 「実感はない。気づいたら倒れていた」 圧巻のKO劇で大会MVPを獲得した吉開は落ち着いて語った。 ボクシングを始めたのは、美里高2年の春からで、デビューは今年5月というキャリアの浅さ。高1の冬までは野球一筋だったが、「団体競技より個人競技をやりたかった。腕力にも自信があった」と転身。たった一人で学校にボクシング同好会も立ち上げた。 島袋ジムの島袋武信会長は、1975年12月に沖縄でWBC世界J・フライ級王者のルイス・エスタバ(ベネズエラ)に挑戦した経験がある。のちに名王者となるエスタバに歯が立たなかったが、果たせなかった夢を吉開に託す。吉開も、「あくまでもここがスタート。スタミナもないし課題がたくさん。でも、目標は世界チャンピオンだし(具志堅)用高さんみたいになりたい」と、沖縄の英雄の名前を挙げた。 ちなみに島袋会長は、その世界戦前にグリーンボーイ時代の具志堅氏とスパーリングをしている。 沖縄出身の世界王者は、過去に7人。沖縄のジム出身では、1992年に敵地でベルトを奪取したWBA世界ジュニアウェルター級王者、平仲明信氏以来、誕生していない。ボクシング王国復活へ。才能と昨今のボクサーが失いつつある野生に満ち溢れた沖縄のジム所属の2人のボクサーへの期待が高まる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)