パリ五輪は「やりきれなかった」…女子バスケ・町田瑠唯(31)が明かした、“涙の理由”と日本の強み
「すぐに車酔いしてしまう」意外な理由は…
――一瞬一瞬、人を見続けて頭が疲れませんか? 町田 試合中は高い緊張感の中にいるからいいんですけど……。日常生活でも、無意識に周りの情報が入ってきてしまうというか、癖で“見えすぎて”しまうことがあります。車に乗っているときは景色の情報が一気に入ってきて気持ち悪くなることがあるので、外を見ないことが多いですね……。空を眺めるくらいで。助手席だと車酔いしちゃうので、友だちと遊びに出るときとかの運転はほとんど私がさせてもらっています。 ――カフェでお茶している時、「奥の席にこういう人がいたよね」と言って友達に驚かれたこともあるそうですね。 町田 テーブルから何か落ちそうなときに、咄嗟に手を出して笑われることもありました(笑)。周りの情報に勝手に身体が反応してしまうことはありますね。
本場アメリカでプレーして感じたこと
――2022年には米国のWNBA、ワシントン・ミスティクスに入団しプレーされていました。そこで持ち味は出せましたか? 町田 前半は厳しかったです。言葉を理解するのに時間がかかりましたし、自分の気持ちが思うように伝わらなかったりと、思っていた以上のストレスがありました。言語でのコミュニケーションに自信がない分、ひたすら練習や試合の動きなどを観察していましたね。 それと、ボールの質感やタッチが日本と違っていたんです。ツルツル滑ってしまって。上手くコントロールが出来なくてストレスだったので、家に帰っても慣れるまでずっとボールに触っていました。 でも中盤から慣れてきて、チームメイトとコート上のホットラインもできた。言葉が通じなくても、呼吸が合って、自分のパスを受けてくれて、シュート決めてくれる。やっぱり私はその瞬間が好きで、それは日本でもアメリカでも変わらなかったです。
シュートを決めると「ルイ・コール」をしてくれた
――バスケの本場である米国女子バスケはトップオブトップ。「さすが」と思うところはありましたか? 町田 全員の意識の高さがすごかったですね。特に、エレナ・デレ・ダンは本当にプロフェッショナルで……。チーム練習が始まる4時間前にコートに現れて個人練習に励んでいました。どれだけ実力があっても、絶対に手を緩めようとしない選手たちからは大きな刺激を受けました。 観客席の雰囲気にも驚かされました。アメリカはホーム・アンド・アウェー方式なので、ホームの時は応援が地割れのように凄いし、反対にアウェーの時はブーイングもある。だからホームの時はファンをもっと喜ばせたいと思うし、アウェーの時は闘争心がより掻き立てられました。シュートを決めた時に「ルイ・コール」をしてくれることも(笑)。少し恥ずかしかったけど嬉しかったですし、そうした感覚は日本ではなかなか味わえないものでした。 ハーフタイムの時にはショーが行われたり、スポーツの試合ではあるものの、一種のエンターテインメントとして確立されていたことも新鮮で、ちょっと羨ましかったな。日本でもバスケ観戦がより身近に感じられるものになってほしいなと思いました。 156cm、38kgでバスケ名門校へ→全国制覇→五輪新記録…「小さいから無理と思ったことは一度もない」女子バスケ・町田瑠唯(31)の人生が変わった瞬間 へ続く
吉井 妙子