錦織圭、再びトップレベルへ けがから復帰「自信出てきた」
男子テニスで元世界ランキング4位の錦織圭（34）＝ユニクロ＝が、度重なるけがからツアーに復帰し、再びトップレベルを目指して戦っている。9月は東京で久しぶりの試合に臨んだ。国別対抗戦、デビス杯（デ杯）ワールドグループ1部のコロンビア戦はシングルスで1勝を挙げ、6年ぶりに出場した木下グループ・ジャパンオープンでは8強入り。日本のファンに健在ぶりを示した。（時事通信運動部 浦俊介） 【写真特集】男子テニス 錦織圭 ◆ウィンブルドンは「ぶっつけ本番」 最近は2年以上にわたり苦しい時間を過ごしていた。2022年1月に股関節の手術を受けて長期離脱。右足首のけがも重なって復帰に時間がかかり、23年6月に下部大会で実戦に戻った。そこでいきなり優勝したものの、翌月に出たツアー大会で左膝を痛めてまた離脱。状態が良くなってきた秋には日本で行われるジャパンオープンや下部大会の出場を目指したが、間に合わなかった。 ようやく試合に出られたのは今年3月のマイアミ・オープンだった。その後も継続して大会に出ることがかなわない中、諦めずにトレーニングを続け、5～6月の全仏オープンや7月のウィンブルドン選手権には「ぶっつけ本番」の形で出場。7～8月のパリ五輪を経て徐々に調子を上げてきた。 五輪後、格付けの高い「マスターズ1000」に当たるナショナルバンク・オープン（モントリオール）に出場し、2回戦で当時世界ランク11位のステファノス・チチパス（ギリシャ）にストレート勝ち。「だいぶ感覚が良くなって、攻める自信も出てきた」と手応えをつかんだ。その後は欧州で下部ツアーの2大会に出て試合数をこなし、日本に帰国した。 ◆後輩たちと楽しんだデ杯 デ杯は4年ぶりの代表入り。9月13日に東京で行われた記者会見で、錦織は長い付き合いになる西岡良仁（ミキハウス）やダニエル太郎（エイブル）ら後輩たちと並んで終始楽しそうに笑っていた。冗談交じりに「僕はあと数年で消えてしまう」と言いつつ、「西岡や太郎がもう少し上がってくることで、若手もどんどん上がってこられると思う」。さらに若い世代の綿貫陽介（SBCメディカルグループ）、望月慎太郎（木下グループ）も含めた後輩の躍進を期待した。 トップレベルへの復帰途上にある自分の代表選出については「葛藤はあった。自分がデ杯に出ることがいいことなのか。若手が育ってきている中で、経験させてあげた方がいいのもあるだろうし」と言った。一方、チームに貢献したいという思いも強く「自分が日本を勝たせるところで力になれたらうれしい」と、添田豪監督の要請を受けた。デ杯ならではの緊張感の中で格下と言える相手をきっちりストレートで下し、後輩たちの試合ではコートサイドから声を出して鼓舞した。 綿貫と望月は「改めて錦織選手の偉大さを感じた」と口をそろえる。プロのツアーを転戦する中で成績を残す難しさを実感し、通算12勝で世界4位まで上がった先輩への敬意がさらに大きくなった。デ杯では試合に向けた準備の仕方や緊張との向き合い方など、参考になる部分が多かったようだ。 チームには、ジュニアで実績がある18歳の2選手も練習相手として同行した。今年の全豪オープンのシングルスと全米オープンのダブルスで優勝した坂本怜（IMG）と、ウィンブルドンでシングルス4強の本田尚也（サトウGTC）。ともに今夏でジュニアを「卒業」し、主に下部ツアーでプレーしている。坂本は「錦織選手に憧れてテニスを始めた。夢を与える側になりたい。それを成し遂げるために四大大会優勝を目指す」と力強い。本田も「プロとしてこういう風にやっていくんだと感じられた」と刺激を受けていた。 ナショナルチームの高田充ヘッドコーチは、錦織、ダニエル、西岡の3人がコーチのような存在感を見せていたと目を細めつつ、「（若手には）トップの選手たちも遠いものと感じないでほしい。彼らができるから自分たちもできると思ってほしい」と期待を込めた。
